『やすらぎの郷』が炎上ドラマを狙ったワケ
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『やすらぎの郷』が炎上ドラマを狙ったワケ

「元テレビ局の社員は入居する資格なし」。これは老人ホームを舞台にした昼帯ドラマ『やすらぎの郷』の設定である。過激なセリフや喫煙、賭け麻雀など、最近のドラマでは有り得ない挑発的なシーンが話題を呼ぶ。「今年最大の問題作」とも言われる脚本家、倉本聰ワールド全開の炎上ドラマはなぜヒットしたのか。

「元テレビ局の社員は入居する資格なし」。これは老人ホームを舞台にした昼帯ドラマ『やすらぎの郷』の設定である。過激なセリフや喫煙、賭け麻雀など、最近のドラマでは有り得ない挑発的なシーンが話題を呼ぶ。「今年最大の問題作」とも言われる脚本家、倉本聰ワールド全開の炎上ドラマはなぜヒットしたのか。

元テレビマンの私が今も憧れる人

実力以上に褒められ過ぎ

シニアの「恋から」にドギマギ

魅力は倉本脚本と思えぬ滑稽さ

 倉本聡企画・脚本の、シルバー世代応援昼ドラマ『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)が話題です。その魅力を解明します。まず企画が、若者に迎合したドラマ作りに反旗を翻し、熟年層向けなのが画期的です。倉本先生は、大河ドラマ『勝海舟』で、制作側と衝突して、北海道へ逃転居。昭和の頃から反逆児で、未だスピリットは衰えず。老人たちは余生が短いから、好きなことやって死ぬんだと、たばこを吸いまくり。禁煙ブームに対して、本音を語ってますねえ。
 ドラマはテレビ黄金時代に活躍した俳優たちを集めた老人ホームが舞台。出演者が豪華で、共演NGをあえて登場させています。主人公の脚本家、菊村栄(石坂浩二)に対し、元妻の浅丘ルリ子と元恋人の加賀まりこが共演。両手に花ですなあ。話は芸能界のエピソードが多く、リアルです。例えば「お嬢」と呼ばれた、名女優の誕生会に誰が呼ばれるかで、すったもんだ。嫌いな俳優を冗談で呪ったら、本当に死んだとか。
テレビ朝日ドラマ「やすらぎの郷」での一場面(テレビ朝日提供)
『やすらぎの郷』の一場面(テレビ朝日提供)
 菊村の奥さんの律子(風吹じゅん)は、認知症を患って、大分前に亡くなっています。そこが南田洋子さんとダブるんですよね。その律子の遺影が絶頂期の風吹じゅんの水着姿って、笑えます。新しく入所した高井秀次(藤竜也)が、過去に律子と何かあったらしいと、菊村は気になってしょうがない。悩んだ揚げ句、昔を知る女優に話を聞くことになったのです。芸能人って、過去に誰とつきあったなんて、気にしないと思うでしょう。実は逆です。自分らがヤリまくっているくせに、いざ自分のこととなると、有名人とつきあっていたコは、しんどいという人が多いんです。
 とにかく見ていて滑稽です。巨匠倉本聡脚本とは思えない軽さに驚き、逆に感服しております。倉本作品で好きだったのは、『前略おふくろ様』です。坂口良子演じる、かすみちゃん、可愛かったなあ。この老人ホームのスタッフは、過去に悪さをした人たちの、更生施設として機能しています。だから娘の坂口杏里を、人生の再スタートとして、介護スタッフ役で出したら、リアルで面白いんだけど。ロケ中に失踪しても話題になりますよ。
 この昼ドラ、現在、BS朝日で毎朝、再放送中で、たまの週末は総集編と、NHKの朝ドラと似た方式を取っています。昼ドラといいながら、朝ドラでもあった。これにはびっくりですね。(「トレンドウオッチャー木村和久の世間亭事情」zakzak 2017.05.25

『やすらぎの郷』ってどんなドラマ?

倉本聰、戦闘モード衰えず

 倉本聰ほど“全身脚本家”と呼ぶべき人はいないだろう。小説には目もくれず82歳になった今日でもひたすら脚本だけを書き続けてきたからだ。その倉本が4月から手がけているのが昼の帯ドラマ『やすらぎの郷』である。『やすらぎの郷(さと) 中 第46話~第90話』はその脚本集で「上」「中」「下」全3巻の2巻目に当たる。倉本というと夜の連続ドラマだが、この時間の帯のドラマにこだわって自らテレビ朝日に売り込んで実現させたものだ。ニュースと芸能話のワイドショーか若者番組でシニアの見るドラマがないとの不満に応えようとして企画した。さらに表層を追うだけで人間を掘り下げない現在のドラマへの危機感があった。だから放映前は辛辣(しんらつ)なドラマ批判がくり広げられる問題作になるかと思ったのだがそうではなく穏やかな元業界人からなる〈老人たちのラブ・コメディ〉に仕立てあげていた。
「やすらぎの郷」制作発表会見に臨む俳優・石坂浩二(右)と 脚本家・倉本聰氏=3月16日、東京・八芳園
『やすらぎの郷』制作発表会見に臨む俳優・石坂浩二(右)と 脚本家・倉本聰氏=3月16日、東京・八芳園 
 だからといって私には意外ではなかった。ヒューマンな『北の国から』の印象が強いが、かつてよく描いていたのは〈大人のラブ・コメディ〉であった。大原麗子と原田芳雄の恋物語『たとえば、愛』(1979年)などすぐ浮かぶ。また、80歳を超えていれば来るべき死についての深刻な思いを込めたものにするところだろうがすでに緒形拳の父親と勘当した末期がんの中井貴一の和解に託して己の死生観を語った『風のガーデン』(2008年)があったので老いや認知症の悩みを扱ってもどこか余裕がある。
 舞台はテレビドラマに貢献した人だけが入れる海辺の無料の老人ホームである。勿論(もちろん)、こんなホームはない。その上、主人公で倉本の分身的な石坂浩二の脚本家以外は親しい老女優(八千草薫、浅丘ルリ子等)や老男優ばかりで他の脚本家がかかわったりはしない。倉本の脳内ワールドを覗(のぞ)くといった感じだ。ここでは石坂の不倫相手の孫娘が登場し、話は佳境に入る。そこに近年一連の芝居でこだわってきた東北の大震災も絡ませ倉本の狙いも見えてくる。震災を忘れつつある世相への抗議だ。戦闘モード、いまだ衰えず。これには敬服する。(脚本家・小林竜雄 産経新聞 2017.6.25

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