トランプは「差別主義者」か

米南部バージニア州で起きた白人至上主義者と反対派の衝突をめぐり、トランプ大統領の差別容認とも受け取れる対応に混乱が広がっている。当の本人は「私の発言をきちんと伝えなかった」とメディアに責任転嫁したが、差別の意図は本当になかったのか。米国を揺るがすトランプ発言の真意を読み解く。

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虎の尾を踏んだトランプ

 トランプ米大統領は、就任7カ月目にして虎の尾を踏んでしまったようだ。
8月13日、米ニューヨークでプラカードを掲げて人種差別に抗議する人々(ロイター=共同)
 南部バージニア州シャーロッツビルで今月中旬、白人至上主義勢力のデモ隊と反対派が衝突し死傷者が出た事件をめぐるトランプ氏の一連の発言は、ナチズムや白人至上主義の秘密結社「クー・クラックス・クラン」(KKK)を非難はした。しかし、「左翼勢力(反対派)の暴力に問題はないのか」「(デモ隊の)全員がネオナチや白人至上主義者だったわけではない。不公平な報道だ」などと猛然と反論したことで、「人種差別」という一線を完全に越えたと受け止められた。
 今や、この問題でトランプ氏を公然と擁護するのは、ホワイトハウス関係者と保守系有識者のごく一部、そして当の白人至上主義勢力だけで、トランプ氏には明らかに分が悪い。
 今回の衝突は、シャーロッツビル市内の公園に設置されている、南北戦争(1861~65年)の南軍総司令官だったリー将軍の像の撤去の是非をめぐって起きたものだ。日本の中高等教育でも教える通り、南北戦争は奴隷制の是非をめぐって北部州と南部州が戦った。そして、今回問題となったリー将軍の像を含む、全米31州に約700~1千体あるとされる南軍司令官や兵士の像や碑の大半は、「南北戦争とは南部の自由と独立のための戦いだ」と主張する人々によって建立された。これらの像や碑が建てられた時期は、南部諸州で有色人種差別を正当化する州法「ジム・クロウ法」が制定された1876年前後と、KKKが隆盛を極めた1920年代、そして公民権運動が激化した50~60年代に集中している。
 戦争の大義は置いて、勇敢に戦った南軍将兵を純粋に顕彰する目的で建てられたことが明確なのであれば、あるいは問題視されにくいのかもしれない。しかし一連の経緯からみて、これらの像や碑の多くに黒人差別の歴史を正当化する意図が込められているのは否定し難い。
 であるのになぜトランプ氏は、そうした碑の撤去を阻止しようとする白人至上主義勢力の肩を持つような発言をやめようとしないのか。
 熱心なユダヤ教徒であるジャレド・クシュナー氏を娘婿として迎えたトランプ氏が差別主義者だとは思わない。一方で同氏が、白人至上主義勢力を2020年大統領選での再選に不可欠な「支持基盤」の一部とみなし、絶縁をためらっている可能性はある。そうだとすれば、重大な誤りだ。
 極右勢力に配慮したせいで穏健な共和党支持者や無党派層が離反するようでは、それこそ再選はおぼつかない。それどころか、かつての奴隷制度に付きまとう負の歴史の超克にいまなお苦しみ続ける米国で、差別を容認したと受け取られる立場を示すことは、政治的にも社会的にも「自殺行為」となりかねない。
 現時点では、トランプ氏が1期目を全うする可能性は、同氏がロシア疑惑をめぐる弾劾で辞任に追い込まれる可能性よりは高そうだ。しかし、トランプ氏が今回の「舌禍」を軽視するようでは、行く手に巨大な「落とし穴」が待ち構えているように思えてならない。(「黒瀬悦成の視線」産経ニュース 2017.08.21

トランプ発言の問題点は3つ

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