「残業代ゼロ法案」にモノ申す

専門職で年収の高い人を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」と、残業時間の罰則付き上限規制を一本化した労働基準法改正案が秋の臨時国会に提出される見通しとなった。それにしてもこの法案、「過労死法案」やら「残業代ゼロ法案」などと悪評がつきまとうが、それは本当なのか。議論の本質を読む。

なぜ否定イメージばかりなのか

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私が法案に反対する理由

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法案は批判されて当然

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不安ばかりを煽るマスコミ

高度プロフェッショナル制度」を含む労基法改正案の修正合意見送りを正式表明した連合の神津里季生会長=7月27日、北海道札幌市(共同)
 連合の神津里季生会長が安倍晋三首相と会談し、専門職で年収の高い人を労働時間の規制から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」について、働き過ぎを防ぐ対策を手厚くする修正を求めた。安倍首相は条件を受け入れたことで、高プロに強く反対してきた連合が容認に転じる方向だという。このタイミングで政権と連合が接近した背景を考えてみたい。
 高プロの対象となる人は、特定高度専門業務(金融商品の開発業務、ディーリング業務、アナリスト業務、コンサルタントの業務、研究開発業務などを厚労省省令で規定)に従事し、使用者との合意で職務が明確に定められている。賃金額は平均賃金額の3倍を相当程度上回る水準以上で、具体的には年収1075万円以上を想定している。これらの人には、労働時間に関する規定が適用されず、残業という概念がなくなる。
 国税庁の2015年度民間給与実態統計調査によれば、この水準に入るのは全体の4%程度である。しかも、この数字は、会社役員をも含む数字であるので、労働者に対する割合はもっと低くなるだろう。年収基準は今後引き上げられるだろうが、平均賃金額の3倍を上回るという法律で規定されている基準がある。名目的な金額は引き上げられても、実質的に一部の高額賃金サラリーマンであるのは変わらない。全体に占める割合も今とさほど変わらず、数%程度であろう。
 それにも関わらず、一部マスコミではあたかもすべての労働者に適用されるかのような報道ばかりだった。「残業代ゼロ」とのマスコミのネーミングで、正しく問題を認識できない人が多いのだ。ちなみに「残業代ゼロ」の代わりに、「年収1000万円以上の人については、時間外労働の所得税課税が100%になる」といえば、反対する人もいなくなるだろう。
 実を言えば、これまでの日本でも、(1)労働基準法上の管理監督者(2)企画業務型裁量労働制(3)専門業務型裁量労働制がある。(1)は年収700万~800万円とされ、労働基準法による労働時間の規定が適用されない。(2)と(3)は、対象者の年収制限はないが、実労働時間にかかわらずあらかじめ決めた労働時間を働いたものとみなす。もちろん、欧米でも労働規制の適用除外がある。欧米における適用除外対象者の労働者に対する割合は、米国で2割、フランスで1割、ドイツで2%程度といわれている。
 こうしてみると、高プロの導入は世界から見れば当たり前、むしろ適用対象が少ないくらいだ。さすがに連合も、理不尽に高プロに反対し続けるのは無理と判断したのだろう。安倍政権が、就業者数の増加、失業率の低下、有効求人倍率の上昇など、過去の政権の中でもトップクラスのパフォーマンスを上げているのも大きい。連合から見れば、民進党より雇用の確保の実績では安倍政権のほうが頼りになるのだ。一方、民進党は雇用確保の実績が上げられず、情けないものだ。(加悦大教授・高橋洋一「日本の解き方」 zakzak 2017.07.21

「成果主義」に騙されるな

労働者にはソンかトクか

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