北朝鮮を核保有国として認めるべきか

世間はすっかり解散風になびいているが、核実験とミサイル発射を繰り返す北朝鮮の脅威は何も変わっていない。トランプ米大統領は「完全に破壊する以外の選択はない」と強く警告。わが国でも長年タブーとされた核武装論に言及する動きもみられ、議論はさらに広がりつつある。もはや北朝鮮の核保有を認めざるを得ないのか。

同盟切り離しの恐怖

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制裁なかったインドにならえ

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「核拡散の時代」に突入

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ロシアでも広がる核容認論

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今こそ対北戦略を見直すとき

 北朝鮮の挑発とそれに対する日米および国連安保理の反応はパターン化してしまっている。日米はパターン化した反応の繰り返しをいつまで続けるのだろうか。手詰まりの制裁が続く間に、北朝鮮は核ミサイル技術をますます向上させ脅威を増大させている。日本は米国とともに、対北戦略を見直すときではないのだろうか。
 いうまでもなく、北朝鮮は大国間の足並みがそろわないことを見越している。中国やロシアが国連安保理決議に忠実に従って北朝鮮に制裁を加えると信じる国はほとんどない。中国が北朝鮮への石油の禁輸を実施すればロシアがその穴埋めをする、北朝鮮も中国への輸出ができなければロシアに振り向けるという事態がこれまで続いてきた。国連安保理の制裁強化決議に対しても中露は表向きには賛同しても、実際には今後とも抜け道を設けるであろう。
 日米の対北制裁による北朝鮮の体制崩壊を中露は何としても阻止したいと考えている。中露にとっては北朝鮮の存在は韓国に駐留する米軍の北進を抑える防波堤である。従って、中露は国連主導という名の米国主導の対北制裁に、そもそも抵抗する。
 北朝鮮が去る7月4日の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験により、米国の「レッドライン」(譲れない一線)を越えたとの予想がなされたが、トランプ大統領は動かなかった。米国としては、北朝鮮による米軍基地への先制攻撃や核実験実施も「レッドライン」と考えてきた。過激な発言を繰り返すトランプ大統領が、外交的解決を重視するマティス国防長官とどう折り合いをつけるかが注目される。軍事オプションは北朝鮮ばかりでなく韓国や日本にも大きな人的被害をもたらすと考えられるため、米国としては慎重にならざるを得ない。
 こうした状況にもかかわらず、日米や国連が対北制裁を強化すれば、北朝鮮はいつかは核・ミサイルを放棄するであろうという想定は、いまや無意味になったというべきではないだろうか。北朝鮮の核・ミサイル能力の向上に対して、米国では北朝鮮の核保有を容認すべきだという議論がなされ始めているが、核保有をすれば北朝鮮は核の威嚇をしなくなるという保証はない。将来の米朝交渉はその辺が大きな焦点の一つになりそうである。
北朝鮮に対する新たな制裁決議を採択した国連安全保障理事会=ニューヨーク(共同)
 また米国では、日本や韓国の核保有を容認すべきだという議論も出ているが、これは日本や韓国が米国の「核の傘」に入らない道を選ぶわけで、同盟の弱体化につながる。しかも核保有は日本の世論を分裂し政治を不安定にする。日本はあくまで米国の「核の傘」の下で、日米同盟を堅持すべきだ。しかしこれ以外の点では、日本はより能動的に外交と防衛を進めるべきである。日本の姿勢は北朝鮮に対して基本的に守勢であり、核・ミサイル実験を監視し、迎撃ミサイルを配備するにとどまって攻勢的な配備を避けてきた。日米合同軍事演習などは示威行動であって威嚇とか挑発行動ではない。
 従って北朝鮮は日本を恐れることなく威嚇することができた。日本はこの状況を変え、北朝鮮に日本への威嚇は経済制裁以上の報復を受けることを認識させる方策を考えるべきである。このためには、例えば、トマホーク巡航ミサイルによる敵基地攻撃力、レーザーによるミサイル迎撃能力、またミサイル発射装置へのサイバー攻撃能力などを保有すべきである。
 遠からず米国は北のICBMを除去することは「自衛戦争」だとの立場をとるであろう。そうなれば、圧倒的な軍事力を持つ米国は勝利を収めるであろう。それは日本や韓国には被害を及ぼすであろうが、米国の軍事力行使の仕方が適切であるならば、被害は相当に縮小されるかもしれない。しかし同時に自衛隊は重要影響事態の下、米軍を支援すべきであることを想定しておくべきである。(西原正「正論」 産経ニュース 2017.09.09

国際社会がすべきこと

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金正恩の要求に応えろ?

望月記者に直接聞いてみたい

 駆け出し記者のころ、ある殺人事件の捜査本部設置後の記者会見で、先輩記者からたしなめられたことをふと思い出した。現場の状況や捜査の進展具合など、事件にかかわる重要情報を筆者が何度も挙手してしつこく質問していたことに、どうも腹が立ったらしい。
 「発生直後ならいざ知らず、警察が公の場で捜査情報をペラペラしゃべるわけがない。むしろ、お前が何の核心ネタもなく、帳場の責任者からやみくもに聞き出そうとしている方がみっともないわ」
 言われてみれば、事件取材に強かった他社の記者たちは、会見では当たり障りのない質問を繰り返していた気がする。彼らは自分たちが抱えているネタを記者会見なんかで聞き出すつもりは毛頭ない。きっと、「夜討ち朝駆け」と呼ばれる捜査幹部との対面の場で、そのネタをぶつけるつもりだったのだろう。
 もっと平たく言えば、どんな記者も他社を出し抜く特ダネを狙っているからこそ、自分の手の内だけは人前でさらしたくない。記者も競争の世界で生きているのだから当然と言えば当然だが、当時はこんなことも理解できないまま必死になっていた自分の浅はかさが恥ずかしく思う。
東京新聞社会部、望月衣塑子記者のツイッター画像
 その点、東京新聞社会部の望月衣塑子(いそこ)記者は、筆者とは違ってなんとも勇ましい。菅義偉官房長官の定例会見でバンバン質問を繰り返す様子は、他社とはいえ同じ社会部出身の筆者とは全くタイプが異なる。ご自身の正義感の強さゆえなのか、官房長官にどんなに煙たがられても質問攻めを続けるねちっこさは、ある意味「記者の鑑」と言えなくもない。
 緊迫が続く北朝鮮情勢をめぐり、「米韓に金正恩委員長側の要求に応えるよう、冷静に対応するように働きかけることをやっているのか」と質問し、官房長官から「北朝鮮の委員長に聞かれたらどうですか」とかわされたことが話題になったが、その後もツイッターで「官房長官会見は、国民の疑念や疑問を率直にぶつけ、政権中枢部に、その姿勢を問うことができる大切な場でもあるはずだ」と持論を述べている。
 正直、ここまで臆面もなく「正義」を振りかざす記者とは出会ったことがない。そう思って先日、望月記者への取材を東京新聞に申し込んだが、残念ながら断られてしまった。彼女がどんな思いで記者会見に臨んでいるのか、直接会って聞いてみたかったのだが、今回はそれが叶わなかった。
 ただ、同じ事件記者の一人として疑問に思うのは、あの尋常ならない質問攻めの本当の目的である。「国家権力を監視する」とか「私は権力と闘う」とか言えば聞こえはいいが、そもそも記者会見という衆人環視の中で官房長官から本音を引き出すのが容易でないことは誰だって知っている。むろん、彼女自身も十分理解しているだろう。ましてや、「内閣のスポークスマン」たる官房長官が記者会見で自分の本音や国家機密にかかわる情報をあけすけにしゃべるような人物だったら、わが国にとってこれほど恐ろしいことはない。本音と建前を上手に使い分けるぐらいの器量の持ち主でなければ、官房長官という重要ポストは務まらない。
 もちろん、事件取材と官邸取材では取材のやり方も異なる。とはいえ、取材対象者から本音を引き出すのは、何も記者会見だけではない。政治部記者だって夜討ち朝駆けをやっているし、本音を引き出すために取材対象者との人間関係の構築に日々努力している。仮に自分の組織や地位を揺るがすような重大なネタがあった場合、そのネタを何の人間関係もない記者や公の場でペラペラしゃべる人なんているのだろうか。ネットでは会見で質問しない記者のことを「なれ合い」とか「質の低下」とか罵る指摘も多いが、それは一面的な見方に過ぎない。記者は誰だって駆け引きの中で取材を続けている。
 振り返って、望月記者はどうだろう。定例会見での官房長官とのやり取りをかいつまんで見る限り、質問の多くが彼女自身の私見のように思えてならないのは筆者だけだろうか。言葉は悪いが、官房長官という取材対象者を個人的な感情でつるし上げ、記者会見を「見世物」のようにしたいだけではないのか。
 むろん、国民の知る権利に奉仕するのは記者の務めである。だが、こんなやりとりを本当に多くの国民が見たいと思っているのだろうか。国民が知りたい真実が会見で引き出せなかったのであれば、いかなる努力も惜しまず取材して真実を追うのが記者の仕事ではないのか。国民の代表という立場を逆手に取って、やみくもに私見をぶつけるのは、ただの自己満足でしかない。綺麗事かもしれないが、記者はあくまで「裏方」に徹するべきである。
 この辺りをどうお考えなのか。望月記者とは直接会って話がしたかった。彼女のツイッターのプロフィルをみる限り、筆者とも同い年のようなので何の遠慮もいりません。もし、このiRONNAをご覧いただく機会がございましたら、ぜひ一度筆者までご連絡ください。首を長くしてお待ちしております。(iRONNA編集長、白岩賢太)