徹底検証「アベノミクス5年間の実績」
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徹底検証「アベノミクス5年間の実績」

日経平均株価が21年ぶりの高値をつけた。連騰が続く株価に「いざなぎ超え」への期待も高まる。解散総選挙に臨む安倍首相は遊説先で自らの経済政策の実績を強調するが、それを実感できない国民の声が止まないのも、事実である。アベノミクスの5年間は本当に正しかったのか。徹底検証する。

日経平均株価が21年ぶりの高値をつけた。連騰が続く株価に「いざなぎ超え」への期待も高まる。解散総選挙に臨む安倍首相は遊説先で自らの経済政策の実績を強調するが、それを実感できない国民の声が止まないのも、事実である。アベノミクスの5年間は本当に正しかったのか。徹底検証する。

「ミスター円」が断言

方向転換するしかない

デフレ脱却に失敗した黒田日銀

安定政権だけではダメ

各党の経済政策は?

マンネリを恐れてはいけない

 最近、基調判断の変更は半年に1回程度である。それくらい変化に乏しい。昨年12月に上方修正が行われた前は、同年3月の下方修正まで遡(さかのぼ)る。このところの「月例文学」はマンネリ気味なのだ。ちなみにアベノミクスが始まった2013年には、12カ月中7回もの上方修正が行われている。あの年は、確かに景気が回復しているという実感があった。ところが消費増税が行われた14年4月以降は、まさしく「緩やかな回復基調」の連続である。
 数えてみたら、何と39カ月も連続で「緩やかな回復基調」という文言が繰り返されている。「緩やかな 回復続いて 治らない」という昔の川柳を思い出してしまった。別に嫌みが言いたいわけではない。景気は趨勢(すうせい)として改善が続いている。特に雇用情勢の改善は著しく、有効求人倍率は1・49倍(今年5月)とバブル期以上の水準である。もっとも高齢化が進んでいるわが国においては雇用の改善が即、消費の拡大につながるわけではない。無職世帯や単身世帯が多くなっているために、景気の波及効果が以前よりも弱くなっている。
 こうした中で、経済政策をめぐる論議もマンネリ気味になっているようにみえる。今の日本経済はデフレとはいえないが、デフレを脱却したとも言い切れない。となれば、日銀の出口戦略を語るのは時期尚早であろうし、財政再建もあまり急ぐわけにはいかない。さらに成長戦略は毎年の恒例行事となってしまい、「小粒」なものが多くなった。昨今かまびすしい「働き方改革」論も、新たな規制が増えるばかりでビジネスの現場に不自由が増大しそうである。
記者会見で金融緩和策について説明する日銀の黒田総裁=2013年4月4日、日銀本店
記者会見で金融緩和策について説明する日銀の黒田総裁
=2013年4月4日、日銀本店
 考えてみれば、「期待に働きかける政策」であるアベノミクスは既に5年目に突入している。「新しいキーワード」を打ち出すことはできても「新しい期待」を盛り上げることは容易ではあるまい。安倍晋三首相は今回、「人づくり改革」と言っているけれども「1億総活躍社会」のときと同様、反響はいま一つに思える。少なくとも黒田東彦日銀総裁が登場して、「2年で2%」と言い放ったときのような新鮮な驚きはない。とはいえ、「ないものねだり」はいただけない。現在の「緩やかな回復基調」を辛抱強く続けていくことが最善となる。その上で重要なのは、「グローバル化という追い風を止めない」ことだろう。
 輸出でもインバウンドでも、海外経済は間違いなく日本経済にプラス効果をもたらしている。アベノミクスが始まってから「円安になっても輸出が増えない」と言われて久しいが、輸出数量指数は昨年後半から増勢に向かっている。為替による追い風がなくても、外需が増えれば輸出は伸びるという当然のことが確認されつつある。この点で、独ハンブルクでの20カ国・地域(G20)サミットの直前に、日・欧州連合(EU)間の経済連携協定が大枠合意に至ったことは大ヒットであった。欧州側はトランプ米大統領の目前で、日本と合意することを優先したらしく中身的には日本側がずいぶん得をした。ワインとチーズで譲歩して、クルマの関税を撤廃させるのだから、出血大サービスである。また日欧が自由貿易で一致したことは、懸案のTPP11(環太平洋戦略的経済連携協定)の交渉にもプラスに働くだろう。
 さて、安倍内閣の支持率低下が著しい。最大の要因は国民の側の「飽き」であろう。なにしろもう4年半も続いている。長期政権としては避けがたいハードルである。景気回復も同様である。「緩やかな回復基調」に飽きてくると、むちゃをやってみたくなることがある。そういう冒険は、滅多(めった)にいい結果を生まないものであるが。マンネリズムを恐れるばかりに、「日本版ポピュリスト政権」を登場させるわけにはいかない。日本経済も安倍政権もここが踏ん張りどころである。(「正論」吉崎達彦 産経ニュース 2017.07.20)

実際に景気は回復しているのか

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