「一生ハケン」で幸せになれますか

「一生ハケン」で幸せになれますか

2014解散総選挙のドタバタ劇の渦中で廃案となった重要法案の一つに、派遣社員の雇用期間制限の撤廃などを盛り込んだ「労働者派遣法改正案」がある。「一生ハケンで格差がさらに広がる」「天下の悪法」。そんな批判もやまない派遣法だが、本当にそうなのか。その是非についていま一度考えてみたい。

ハケンという働き方を考える

 派遣社員の雇用期間制限の撤廃などを盛り込んだ「労働者派遣法改正案」は、派遣社員の増加や固定化につながるとして野党の大きな反発を受け、合意を得ぬまま衆院解散により見送られたが、今回の選挙でも争点の一つとして、各党が論戦を繰り広げている。
 労働者派遣法は、制定された1986年以来、「常用代替禁止」(正社員を派遣労働者に置き換えてはならない)の原則を守るため、同一労働者が同一職場で派遣就労する上限を3年としてきた。今回の法改正は3年ごとに人や部署を替えれば、ずっと派遣社員を雇用できることになり、常用代替禁止の原則が破られる大きな転換期となる。
 2014年7月~9月までの総務省発表による雇用情勢によると、非正規の割合は全体の37.1%。非正規1950万人のうち多くを占めるのがアルバイトやパートで、派遣社員は116万人、非正規のなかでわずか約6%という数字だ。
 大手人材派遣会社の担当者は「今回の法改正は、現行法では『派遣業務によって期間の取扱いが異なるため、わかりやすい制度になるよう速やかに見直しの検討を開始すること』と、平成24年改正労働者派遣法の附帯決議に基づき、有識者による研究会と労働政策審議会での議論を経て提出されたものだった。今回の改正案の廃案は残念。派遣労働者自体の数は、非正規雇用者の中で一割にも満たないにも関わらず、雇用対策の目玉として話がなされることには違和感を感じる。派遣社員にネガティブなイメージを持つ人がいまだにいるが、主婦の方などワークライフバランスを考えて派遣社員を選ぶ方や、キャリアアップなどポジティブな理由で派遣社員を選ぶ人も多い」と語る。
 派遣社員は格差社会を代表する存在として語られがちだ。
 2006年に報じられたキャノン偽装請負・雇い止め解雇問題や08年のリーマンショックによる不況で派遣切りされた労働者が集まった「年越し派遣村」に代表されるように、派遣社員が不当な扱いを受けてきた歴史がある。いまでも、あくまで派遣は臨時の業務であるため、正社員とは区別され、不安定で社会的な信用度も低いままだ。一方で、正社員でもリストラは珍しくなく、ブラック企業の横行に代表されるように、正社員が必ずしも好待遇で絶対安定ということもなくなった。
 経済ジャーナリストの荻原博子さんは「問題は派遣だけの話ではなくて、正社員だからと体を壊すまでこき使われて、対応が悪くても文句を言うことができずに、心身を病んでいく人も増えている。結局は、そうやって正社員も下に引きずられていく。底上げしていくような政策をとることが大切なんです」と語る。
 テクノロジーの進歩や働く人の意識の変化により、働き方もますます多様化していくであろうし、今後も正社員という雇用形態がスタンダードであり続けるとは限らない。派遣社員の増加や固定化はもちろん重要な問題ではあるが、与野党には正社員との格差の是正など、派遣社員であっても安定して仕事にうちこめ、結婚など将来への人生設計ができる環境をつくることができるような政策の実現に向けた建設的な議論をしてもらいたい。(iRONNA編集部 川畑希望)

改正のポイントと背景

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今回の改正案に派遣社員の心中は

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オランダでは戦後、国の再建のため厳格な賃金政策が行われた。1964年には賃金の爆発的上昇が起こるものの、生産性が十分に上がらず、1970年代後半には失業が増大する。1982年には、失業問題を解決すべく「ワッセナー合意」が締結された。ワッセナー合意は、労働者側が労働時間の短縮や賃金の抑制、企業側が雇用の創出、そして政府は減税の実施や社会保障の見直しなど、労働者、企業、政府それぞれが共通のゴールを目指して歩み寄りをし、結果的に、パートタイムを「正規の労働者」と認めてフルタイムとパートタイム労働の「同一労働・同一賃金」を実現したほか、雇用の創出やパートタイム就労の増加による失業率の低下、女性の労働市場への参加率の増加、世帯収入が増えたことによる経済成長の実現など、数々の成果を生んだ。
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