2018年06月20日 11:41 公開

ニッキー・ヘイリー米国連大使は19日、米国が国連人権理事会を離脱したと発表した。同理事会は「政治的偏見のはきだめ」だと批判している。

ヘイリー大使は、「偽善と自己満足」に満ちた組織が「人権を物笑いの種にしている」と述べた。

同大使は昨年にも、「慢性的な反イスラエル的な偏見」があるとして人権理事会を非難し、加盟を見直すとしていた。

ヘイリー国連大使は、マイク・ポンペオ米国務長官と共同記者会見を行った。ポンペオ長官も過去に、人権理事会を「人権の非力な守り手」と評していた。

しかし人権活動家らは、米国の離脱によって世界での人権侵害を監視し対策を取る努力が損なわれると指摘している。

国連のアントニオ・グテレス事務総長は報道官を通じ、米国には理事会に「残って欲しかった」との声明を発表した。

また、ザイド・フセイン人権高等弁務官は米国の離脱について「驚くべきニュースではないが、残念だ。今日の世界の人権の状況を考えれば、米国は後退ではなく前進すべきだ」と話した。

https://twitter.com/UNHumanRights/status/1009188496370814976

一方、イスラエルは米国の決定を歓迎している。

今回の離脱劇は、トランプ政権が進める米・メキシコ国境を越えた不法移民の親子を引き離す政策が大きな批判を浴びるなかで行われた。

国連人権理事会とは?

国連は2006年に人権理事会を設立したが、人権侵害の疑いのある国にも加盟を許していることで批判を浴びていた。

47カ国が理事国として選出され、3年の任期を務める。理事会は年3回開かれ、普遍的・定期的レビュー(UPR)と呼ばれるプロセスで全国連加盟国の人権に対する取り組みを評価する。

また、人権侵害があったとする報告に対し、独立した専門家を派遣したり委員会を設置することもできる。これまでにシリアや北朝鮮、ブルンジ、ミャンマー、南スーダンに対してこうした措置が取られた。

なぜ米国は離脱したのか

米国は長年、人権理事会を批判してきた末に離脱を決定した。

米国は2006年の理事会創設当時も加入を拒否していた。理事会の前身である人権委員会と同様、人権侵害の疑いのある国にも加盟を許していたためだ。

加入したのはオバマ政権時代の2009年で、2012年に理事国に再選された。

しかし2013年には、中国やロシア、サウジアラビア、アルジェリア、ベトナムといった国々が選ばれ、理事会は人権団体から非難を浴びた。

さらに、理事会から不当な批判を受けたとしてイスラエルがレビューをボイコットしている。

ヘイリー米国連大使は昨年、反政府デモで何十人もの死者が出ているベネズエラに何の措置も取られていない状況でイスラエルに対する非難決議が採択されたことは「受け入れがたい」と述べていた。

イスラエルは理事会で唯一、常設課題とされている国で、パレスチナへの対応が定期的に調査される。

ヘイリー氏は人権理事会への痛烈な批判をした後、「この離脱で我々の人権への貢献が後退することはないことを明言しておく」と話した。

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離脱への反応は?

米国の離脱を受け、いくつかの国や外交官が遺憾の意を示した。

人権理事会のボジスラブ・スツ理事長(スロベニア大使)は、理事会は「世界中の人権問題や状況に対応している」唯一の団体だと話した。

「力強く精力的な理事会を維持することが重要だ」

ボリス・ジョンソン英外相は離脱決定を「残念だ」と述べ、改革は必要なものの、理事会は「世界の国々の責任を問うために必要だ」と話した。

また、多くの慈善団体や支援団体が米国の離脱を批判している。米自由人権協会(ACLU)はツイッターで、「トランプ政権の国連人権理事会からの離脱は、本国での権力乱用と共に我々がすでに知っていることを明確にしただけだ。トランプは最も保護を必要としている人々の基本的人権を侵害する、集団的で攻撃的な活動を主導している」と述べた。

https://twitter.com/ACLU/status/1009188441714806786

ニューヨークに拠点を置くヒューマン・ライツ・ウォッチも、トランプ大統領の人権政策を「一方的だ」と非難している。

これに対し、イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相は米国の決断をいち早く評価し、ツイッターに「イスラエルは、国連人権理事会と名乗る偽善と嘘に対する勇敢な決定について、トランプ大統領、ポンペオ長官、そしてヘイリー国連大使に感謝する」とつづった。

https://twitter.com/netanyahu/status/1009188678508470272


友好国にさらなる打撃 ―ナダ・タウフィクBBCニュース記者、ニューヨーク

これはトランプ政権による新たな多国間主義の否定だ。米国に世界の人権を守り、促進してもらおうとしていた人々を動揺させているだろう。

米国と国連人権理事会との関係は常に摩擦の連続だった。ブッシュ政権は、2006年の理事会設立時に加入をボイコットした。その理由の多くは、今日のトランプ政権が述べているものと同じだ。

当時の国連大使はジョン・ボルトン米国防長官で、彼もまた強力な国連批判者だった。米国が理事会に加盟したのは2009年、オバマ政権になってからのことだった。

多くの米国の友好国が、理事会に残るよう説得を試みていた。米政権が長い間持ち続けている理事会に対する批判に賛同している国でさえ、米国は離脱ではなく、理事会内からその改革に努めるべきだと信じていた。


(英語記事 US quits 'biased' UN human rights council