杉山崇(神奈川大人間科学部教授)

 サッカーW杯ロシア大会、西野ジャパンが初戦を迎え、2-1でコロンビアを下しました。彼らの戦いぶりは褒めたたえられるものです。実際、試合後はコロンビアの知将、ペケルマン監督も「日本は自信を持っていた」と脱帽していました。ここでは、この勝利を心理学から考えて続くセネガル戦、ポーランド戦のさらなる楽しみ方を探ってみましょう。

 この試合を通して感じられたのが、ほぼすべての先発メンバーには一切の迷いが見られずに、組織的な攻撃と守備をしていたことです。代表メンバー発表の際に、西野朗(あきら)監督がGK以外の選手をフィールドプレーヤーと呼んだように、「FW、MF、DFは関係ない」という理念をまさに体現したかのようです。

 マイボール時には後ろの選手も積極的に攻撃参加していました。カットされたものの、DF吉田麻也が縦パスを試みる場面もありました。サッカーの定石ではなく、ディフェンスの要の吉田が攻撃の起点になろうと試みたことに、私は「俺たちみんなで勝つ」という熱い思いを感じました。そして、先発メンバー全員が自分の、そしてこのチームのサッカーに迷いなき自信を持っている様子がうかがえたのです。

 また、ディフェンス時には全員がDFの意識を持ち、コロンビアの選手に迷いなくアタックしていました。右ウイングのMF原口元気も丁寧なディフェンスをしていましたが、象徴的だったのは1トップのFW大迫勇也のファインプレーです。大迫は、自陣のペナルティーエリアに戻って、途中出場のMFハメス・ロドリゲスの決定的なシュートをブロックしたのです。

 実は、大迫はテストマッチのスイス戦後、1トップがファーストDFとして走り回るスタイルについて「30分で死ぬ」と発言していました。ところがこの日、ディフェンスにおいては、トップ下のMF香川真司と役割を分け合って、コロンビアにプレッシャーを掛けていました。前線の守備がより組織的に改善されたことで、このようなファインプレーにつながったものと思われます。

 では、西野ジャパンはどうして攻守に全員で自信を持って戦える集団になれたのでしょうか。その答えの一つとして、西野監督の「自分たちで問題解決をさせる」というアプローチにあったと思われます。
日本-コロンビア 後半途中出場し、仕掛ける本田圭佑。(左から)ハメス・ロドリゲス、大迫勇也=サランスク(中井誠撮影)
日本-コロンビア 後半途中出場し、仕掛ける本田圭佑。(左から)ハメス・ロドリゲス、大迫勇也=サランスク(中井誠撮影)
 西野監督はガーナ戦から始まった三つのテストマッチを通して出てきた問題を、成熟した大人の選手たちに対し、自分たちで話し合って考えさせたと言われています。トップダウンで指示を受け続けると、心理的リアクタンス(自由を奪われる不快感)が発生して、誰でもスムーズに動けなくなります。場合によっては、リーダーに対する感情的な問題にも発展します。チーム作りに時間の制約がある中で、西野ジャパンがこのような事態に陥るのは致命的です。

 そこで、西野監督は最終登録メンバーで、自分が指示を出して戦わせる選手ではなく、経験豊富で先行きが見通せる選手、さらには人間的にも成熟し責任感も協調性もある選手を選んだのでしょう。結果的に、一部で「年功序列ジャパン」「おっさんジャパン」と揶揄(やゆ)されるような平均年齢の高いメンバーが集まりました。

 ですが、心理学の常識として、経験値は問題解決能力の必要条件です。だからこそ、西野監督は自発的に問題発見と解決法の探索ができるメンバーを集めたわけです。