問題解決能力に優れた選手を集めれば、課題に直面するごとに自分たちに最適な解決法、すなわち「自分(俺)たちのサッカー」を見つけ出すことができるはずです。コロンビア戦を見る限り、西野監督の賭けは大成功でした。選手たちは自信を持って、「課題を乗り越えて自分たちで見つけた、俺たちの最善のサッカー」をプレーできたのだと思われます。

 ところで、「俺たちのサッカー」で日本は4年前に玉砕したはずです。当時のW杯直後には自分に酔いしれているだけの「俺たちの○○」という言葉が、悪い意味で流行語にもなりました。確かに、当時は「俺たち(一部の主力選手)がやりたいだけのサッカー」を、からかいの意味で「俺たちのサッカー」と呼んだこともあったようです。ブラジル大会からの主力選手たちにはその反省が深いのかもしれません。

 コロンビア戦では、現実的な問題や弱点をみんなで解決するために考え抜いた「成熟した俺たちのサッカー」が披露されたように思えました。4年前の反省があるからこそ、テストマッチで見えてきた問題に真剣に向き合い、「みんなでどのようにプレーするべきか」を考え抜いて、本当の意味での「俺たちのサッカー」を見つけ出したように思えます。

 実は、心理学では「協力し合えなければ解決できない問題」を共有することで、人は仲間になれることがわかっています。このチームは、日本人にフィットするのか疑問視されたハリル前監督の戦術や、監督交代、戦術の喪失、結果の伴わないW杯出場国とのテストマッチなど、多くの課題をともに乗り越えてきた仲間がベースとなっています。その仲間で作り上げた「自分たちのサッカー」だからこそ、団結して自信を持って試合に臨めたのだと思われます。

 こうして考えると、試合を決定づけたともいえるコロンビアMFのC・サンチェスのハンドは、ある意味で必然だったのかもしれません。世界最高峰のスペインリーグで活躍する32歳のベテランが、不用意に手を伸ばしてしまったことは驚きをもって見られています。

 しかし、世界中のメディアが西野ジャパンについてネガティブな印象しか語らない中で、ひそかにポジティブなチームの醸成が進んでいたのです。察するに、コロンビアは日本には絶対に負けない、すなわち勝ち点3を計算に入れて試合に臨んでいたのではないでしょうか。

 その中で開始3分もたたないうちに、立て続けに強烈なシュートを受けるとは思ってもいなかったのでしょう。どんなに経験豊富な人であっても、想定外の出来事には弱いものです。経験は次に何が起こるかを予測させてくれる力ですが、意識的に使わないと何の役にも立ちません。
日本―コロンビア 前半、ハンドの反則を犯すコロンビアのC・サンチェス(左)。日本がPKを得て先制した=サランスク(タス=共同)
日本―コロンビア 前半、ハンドの反則を犯すコロンビアのC・サンチェス(左)。日本がPKを得て先制した=サランスク(タス=共同)
 もしかしたら、C・サンチェスは自分たちのピンチを予想しておらず、驚きと負けたくない気持ちが交錯して思わず手を伸ばしてしまったのかもしれません。もしそうなら、ハンドは単なる不運ではないように思われます。

 最後に交代出場のMF本田圭佑だけはプレーに少し迷いがあるように見えました。決勝ゴールのアシストは見事でしたが、本田らしくないパスミスも見られ、試合後のインタビューも一部では「お通夜状態」と報じられるほど元気なく見えます。これが次戦に向けての「勝ってかぶとの緒を締める」であってほしいと願うところです。

 次のセネガル、そして最終戦の相手であるポーランドも難敵です。西野ジャパンがコロンビアを破ったことで、油断することなく攻めてくるでしょう。その中で成熟した「俺たちのサッカー」がどこまで通用するのか、その中で潜在力をまだまだ発揮しきれていない本田、出番のなかった宇佐美などの選手がどのように入っていくのか、楽しんで見届けたいと思います。