舛添要一(前東京都知事)

 6月18日朝、マグニチュード(M)6・1の地震が大阪を襲った。死者5人、負傷者が400人を超え、ガス・水道や公共交通機関が止まるなど、日常生活に大きな被害が出た。亡くなった5人は、いずれも塀や本棚などの家具の転倒によるものであり、特に通学路のブロック塀が小学生の命を奪ったことは深刻に反省しなければならない。

 日本は地震や火山、水害が頻発する「自然災害大国」であり、日ごろから災害への備えが肝要である。過去25年を振り返っても、兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災、1995年)、新潟県中越沖地震(2007年)、東日本大震災(2011年)、熊本地震(2016年)など記憶に残る大地震が続いている。まさに、災害はいつ発生するか分からないのであり、それだけに日ごろからの備えが必要である。

 今回の大阪北部地震は直下型であるが、都市がこのタイプの地震に襲われると大きな被害が出る。研究者の予測では、東京で30年以内にM7クラスの直下型地震が起こる確率は70%という。

 政府の中央防災会議の作業部会によると、M7クラスの首都直下型地震で、死者は約2万3000人、負傷者12万3000人、建物の全壊・全焼は約61万棟、経済被害は約95兆円に上るという。95兆円というのは、わが国の政府予算の1年分に相当する。

 私は若いころ、スイスで学んでいたが、この国はフランスやドイツ、イタリアという強国に囲まれており、国家の安全と平和を守るために危機管理体制が完備している。例えば、高速道路はなるべく直線にし、中央分離帯を着脱可能なものとする。それは、戦争や災害のときに滑走路として使うためである。

2012年9月、警視庁震災警備総合訓練で、
幹線道路を一部閉鎖し「緊急自動車専用路」として
通行する警察、自衛隊などの緊急車両(小野淳一撮影)
 これに対して、日本の高速道路はなるべくカーブを多く作るようにしている。だが、それは居眠り防止という交通安全上の配慮からであり、安全保障や防災という危機管理的な発想は全くない。

 私が東京都知事のとき、環状七号線や環状八号線といった広い幹線道路を滑走路として活用できないか検討してみたが、ヘリポートを作るスペースもないことに愕然(がくぜん)とした。道路を通すときに、危機管理の発想が日本人にはないのである。

 そこで私は、都知事として重要政策の一つに「災害への備え」を掲げた。2014年4月に「首都直下地震等対処要領」を策定し、関係各機関との効果的・効率的な連携の下で円滑に応急対策活動を展開できるように備え、発災後72時間に行うことが想定される主な応急の対策について万全の体制を組んだ。