生田英輔(大阪市立大准教授)

 6月18日朝、マグニチュード(M)6・1の大阪府北部で地震が発生した。震源に近い府北部の高槻市、茨木市、枚方市などに被害が集中し、一部で「大阪地震」と呼ばれたが、震源から10キロ以上離れた大阪市中心部では目に見える物的被害はほとんどなかった。

 この状況は1995年の阪神・淡路大震災と同様で、直接的な被害が限定的な地域に集中する内陸直下型地震だった。日本有数の大都市圏で発生した地震であり、都市型災害におけるヒトとモノの課題を整理したい。

 ヒトの課題は帰宅困難者である。地震発生が通勤時間帯にあたり、大量の列車が通勤・通学者を満載していたが、列車の脱線や衝突などの深刻な被害はなかった。一方で、長時間にわたる車内待機を強いられ、降車した後も運行再開のメドが分からず、出勤するか帰宅するかの判断を迷った人が多かった。

 ただ、今回は筆者も体験したが、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などのインターネットを使ったサービスがほぼ問題なく使用できたことが大きかった。通勤・通学途上でも会社、学校、家族とスムーズに連絡を取れた人が多かったようだ。

 実際に地震発生時に列車内にいた人によると、車内で待機⇒降車⇒最寄りの避難所へ誘導され、避難所でひと休みした後、徒歩で帰路へついたそうだ。
大阪府北部の地震で地下鉄「大阪メトロ」も運休し、地上の出入口付近も人でごった返した=2018年6月18日午前8時54分、大阪市住吉区(安部光翁撮影)
大阪府北部の地震で地下鉄「大阪メトロ」も運休し、地上の出入口付近も人でごった返した=2018年6月18日午前8時54分、大阪市住吉区(安部光翁撮影)
 地震発生当日の気象条件を見てみると、アメダス大阪の6月18日午前8時の気温は22度、最高気温は午後2時の26・8度と、さほど高温にはならず、風速が4~5メートルあったため、体感気温としては比較的過ごしやすい状況だった。

 したがって、数時間に及ぶ徒歩での出勤・帰宅でも熱中症などの発生は少なかったと考えられるが、熱中症に関連する暑さ指数(WBGT)は環境省によると6月18日は午前11時から午後6時まで「注意」の範囲で、そのうち午後2時は「警戒」の範囲となっていた。もう少し気象条件が悪かったら、徒歩での出勤・帰宅は困難を伴っていたと考えられる。

 鉄道が止まったため、幹線道路は多くの歩行者が通行し、車両もいつも以上に多く、至る所で渋滞が生じていたが、大規模な混乱は発生しなかった。地震発生がもう少し遅い時間で、出勤が完了していた場合は、特定のターミナル駅でより多くの帰宅困難者が発生し、混乱が生じたかもしれない。

 今回の地震において、繰り返し映像が流された新御堂筋は府北部と新大阪駅・大阪駅をつなぐ無料の地域高規格道路であり、日常より混雑していた。地震の被害の大きかった府北部と大阪市中心部をつなぐ幹線道路であり、並行して走る地下鉄御堂筋線の運行が停止したということで、多くの帰宅困難者が新御堂筋に殺到した。