2017年はどうにか1・5%ほどの経済成長率を実現させたが、政府目標の2%には及ばなかった。さらに今年に入って、米トランプ政権による追加制裁が関連する企業を直撃しており、経済の再減速が懸念されている。

 日本でも長期停滞のうち、90年代前半から21世紀初めにかけての新卒世代を「ロスジェネ世代」と呼ばれるが、実はロシアでも若年失業率が長期間高止まりしたままである。ロシアの失業率自体は現状で4・9%であるが、これはロシアの失業率のトレンドからみるとかなり低い水準だ。ただし、全体の失業率に対する15~24歳の若年失業率の比率は約3倍で高止まりしているのである。

 この比率は、先進国の中でイタリアに次いで第2位である。あの「ヘル朝鮮(地獄の韓国)」といわれるほど若年雇用が深刻な韓国よりも上回っているのである。このような状況の中、ロシアの若い世代がW杯関連で消費しようとすれば、所得の制約が厳しいので他の支出を減らさざるをえない。

 では、海外からの観光客がもたらす消費はどうだろうか。この追加的需要はある程度見込める。日本とロシアの関係でみてみると、ロシアを訪問する日本人観光客の数は、前年比26・8%増の10万7300人だという。

 また、最近では中国からの観光客の激増も報じられている。ただしこの場合でも、追加需要が発生しているかどうかは慎重に見ておかなくてはいけない。海外の観光客の激増を嫌って、ロシア人の観光客が減少するかもしれないからである。

 実際に、ロシアでは激増する中国人観光客に対する批判も生じているようだ。そうなれば、開催期間中、ロシア人観光客がスタジアムのある11都市への観光を避けるケースも出るかもしれない。実際に98年W杯が行われたフランスでは、期間中に通常の観光客が激減してしまい、海外からの増加があっても全体での純増はみられなかったというケースも発生している。

 このように「W杯の経済効果」といっても、大会関係者の考えるほど単純には行かない側面が多々ある。特に、先に指摘したように、国内の経済状況が大きく影響するからだ。開催中は多少景気がよくなっても、その後はどうなるかは、まさにロシアの経済政策の運営や、経済制裁に対する外交手腕に大きく関わってくるのである。

 このことは、W杯だけではなく他の国際的なビッグイベントにも共通して言えることである。かつて、日本銀行の原田泰審議委員が検証したところ、五輪などのイベント後に不況が来やすいかどうかは、そのイベントが終わったことによる消費や投資の減少に依存するというよりも、その後の経済運営に大きく関わってくるという(原田泰『コンパクト日本経済論』新世社)。その意味では、W杯後のロシア経済には暗雲が立ち込めている。
セネガル戦で「大迫半端ないって」と書かれたゲートフラッグを掲げる日本サポーター=エカテリンブルク(甘利慈撮影)
セネガル戦で「大迫半端ないって」と書かれたゲートフラッグを掲げる日本サポーター=エカテリンブルク(甘利慈撮影)
 最後に、日本の「W杯の経済効果」はどうだろうか。セネガル戦も深夜まで日本国内で熱い観戦が続いた。「ブルーマンデー」など吹き飛ばす熱気、と伝えるメディアもあった。筆者もその熱気をともにした一人だ。

 ただし経済効果となると、連載で指摘し続けてきた通り、W杯自体の経済効果よりも政府や日銀の経済政策が重要なのは明らかだ。日本の消費は相変わらず低迷したままであり、さえない。安倍晋三首相も日本代表のユニホームを着て観戦するのは結構だが、その熱気を経済に伝える努力をすべきだろう。まずは消費増税の再凍結、そして消費減税に着手するのが好ましい。それぐらいできなければ、「経済政策のW杯」出場にはほど遠いだろう。