2018年06月29日 12:47 公開

「あぜんとするような」幕切れで、ワールドカップ(W杯)を「傷つけた」試合は終わった。

サッカー日本代表は28日、ポーランド代表に1-0で敗れた。しかし、グループHのもう1戦、コロンビア対セネガルが同スコア(1-0)によるコロンビア勝利で終わったことで、W杯決勝トーナメント進出を果たした。

しかし、この事実だけでは、話全体を語ったことにならない。

何が起たのか

日本とセネガルは最終戦を同じ勝ち点、同じ得失点差、同じ得点数で迎えた。同じ状況で最終戦が終了すれば、試合終了時のフェアプレイポイント(警告数)の差でグループ最終順位が決定するはずだった。セネガルは開幕2試合で5つの警告を受けており、日本は3つだった。

最終戦の後半、日本とセネガルは共に1-0とリードを奪われ、イエローカードも1枚ずつ出されており、日本の決勝トーナメント進出が近づいていた。しかし、既にグループステージ敗退が決まっているポーランドに2点目を奪われたり、警告2回あるいはレッドカードを受けたりすれば、敗退の可能性があることも日本はわかっていた。

そのため、試合終了まで10分を残して、日本はもがくよりも動かないことを決めた。セネガルがコロンビア相手に同点とし、日本を敗退に追い込まない方に賭けたのだ。

1982年スペインW杯での、西ドイツがオーストラリアに1-0で勝利した悪名高い一戦を思い起こさせるような光景の中、日本とポーランドは歩くような速度で試合終了まで戦った。

本田圭佑や香川慎司といった攻撃の選手をベンチに置いたまま、日本はFW武藤嘉紀に代えて主将のMF長谷部誠を送り込み、動かない姿勢をとった。

日本はボールを持っている時は守備や中盤の間で回し、敵陣を数メートル以上越えることはなかった。日本は、今大会初勝利となったポーランドにも、危険のない地域でプレイさせた。

アルジェリアを1次リーグ敗退に追い込んだ36年前の西ドイツ対オーストラリア戦、通称「ヒホンの侮辱」の時と同じように、観衆は不満を示すブーイングを送り、指笛を吹いた。W杯グループステージ最終戦は、この36年前の試合をめぐる議論をきっかけに、組ごとに同時刻に開催されるよう変更されていた。

ボルゴグラードでの試合が終わった後、日本の選手、監督、サポーターは、チームの賭けが成功したか確認できるまで、約1分間待つことになった。結局、セネガルは得点できず、日本はグループステージを突破して決勝トーナメント1回戦でベルギーと対戦することになった。

監督が語ったこと

日本の西野朗監督は「非常に厳しい選択」だったと語った。

「我々はそのままの状態をキープし、他力に頼る選択をした」と西野監督は述べた。「少し後悔はあるが、この状況で自分の中になかったプランを選択した」。

「ブーイングを浴びながら選手たちにプレイさせたことは、自分の信条ではない(中略)グループステージを突破するために選択し、運がついてくれた。救いだったのは、(次の)ステージに上がれたというところだけ」

西野監督は、MF長谷部を送り出す際、リスクを冒さず、イエローカードももらわないよう指示したという。

「万が一、0-2になったら?」と西野氏は話した。「選択が正解と出れば、勝負にも勝ったということ」。

画像で見る ほぼ動かなくなった試合

英スポーツデータ会社「オプタ」が提供した、ボールタッチが起きた場所を示す画像が下記だ。これを見ると、80分以降何が起きたかがわかる。

左の画像が日本のボールタッチを示す。画像をみると、日本はピッチのうちポーランド側3分の1に入っていない。ポーランドのボールタッチを示した右側の画像にあるペナルティエリア内の2つの点は、82分にアルトゥール・イェドジェイチクがヘディングシュートを放った時のものだ。この試合最後の得点機で、長いスローインからのヘディングだった。

最後の5分間は、ボール保持の86.5%がピッチの中央エリアで起こっている。

また、シュートや反則、コーナーキックなどがあった際に記録されるオプタのフィードには、82分以降試合終了までの間、何も書かれなかった。

「今では日本にぼろ負けして欲しい」  BBC解説者の発言

○ 英プレミアリーグ・エバートンの元MFレオン・オスマン氏(BBC Two)

最後の10分間、両チームの振る舞いは見苦しかった。こんなことはワールドカップでみたくないという、そのものだった。試合が茶番になった。

日本は81分、センターフォワードに代えてMF長谷部誠を投入した。長谷部は試合の速度を遅くした。長谷部は、チームがイエローカードの枚数で勝っているという事実を強調し、チームメイトにプレイを遅くするよう伝えた。

長谷部の行動は、試合最後の5、6分の雰囲気を強く決定づけた。両チームとも動かず、ボールを押し込もうともしなかった。無気力が試合の勢いを失わせ、とてもひどい結末にした。

○ 北アイルランド監督のマイケル・オニール氏(BBC Two)

1982年や1986年に試合を見ていた時を思い出す。オーストリアや西ドイツがああやって、しかももっと長いこと、試合時間を消化していた。

よその試合がどうなるかに自分の運命すべてを預けてしまうなんて、監督として、あぜんとする。

少し日本ひいきになっていたのだが、次の試合でぼろ負けしてもらいたい。

○ BBC Twoのコメンテーター、マーク・ロウレンソン

そもそもとてもお粗末な試合だったものが、茶番と化した。

ワールドカップでの順位を決めるのに、もっとましなやり方があるはずだ。得点数が重視されるべきだ。得点こそ、サッカーで一番大事なものなのだから。警告を受けるのは誰にでも出来る。

国際サッカー連盟(FIFA)にとっても、恥ずかしい事態だ。

(日本選手が、近くにポーランド選手がいないのに、またぎフェイントをした後)笑うべきではないが、完全な茶番になった。審判が手を振っている、何に対して? 審判が無理やり、選手にプレイさせることはできない。

○ イングランド代表の元主将テリー・ブッチャー氏(BBCラジオ5ライブ)

後味の悪い試合だった。ワールドカップをだめにする、ひどいやり方だ。侮辱だ。

今大会はこれまで素晴らしかった。ポーランドと日本のせいで、ワールドカップに少し汚点がついてしまった。

○ 元スコットランド代表FWパット・ネビン氏(BBCラジオ5ライブ)

もし日本がグループステージを突破できていなかったら、日本は笑いものになって、自業自得だと言われたはずだ。日本は賭けに打って出たんだ。

サッカーのこんな試合を見るのは全く好きじゃない。ただ、攻め続け、再び失点してグループステージを敗退していたら、日本はばか正直で愚かだと言われていただろう。

現実世界では時々、奇妙な状況が作られる。そして日本はチャンスをつかんだ。セネガルが得点していたら万事休すだった。

○ BBCラジオ5ライブのコメンテーター、コナー・マクナマラ

今後さかんに議論される試合になるだろう。こういうことがあるから、グループステージ最終戦は同時に行われる。日本は走っていない。2人の日本選手が、お互いにボールを回し合っているだけだ。15ヤード(約13.7メートル)以内にポーランド選手は誰もいない。

最後の15分で、この試合は有名なドイツ対オーストリア戦の流れをくむ茶番の一種になった。ただそれは、1982年には存在しない危険を伴うものだった。

日本が賭けに出たことで、試合が止まってしまった。セネガルが得点していたら、日本はグループステージに敗退し、費やした全ての時間が無駄になるかもしれなかった。日本はフェアプレイ(ポイント)で勝ちあがったが、これをフェアプレイと言えるだろうか? これが、大会の精神なのだろうか?

(英語記事 World Cup 2018: Japan go through but final group game ends in 'mind-boggling farce'