清水英斗(サッカーライター)

 グループCの3戦目、デンマーク対フランスで見た風景が、そのままグループHの日本対ポーランドでも見られることになった。

 ゴールを目指さない、無気力ポゼッションによる時間潰し-。両チームの選手がプレーを止め、それに対して観客の大ブーイングが注がれる。グループリーグ最終節は、勝ち点や得失点の計算により、対戦した両チームの「落とし所」が生まれるケースが往々にしてある。

 リーグ戦とはすなわち、目の前の相手との単純な勝負ではないため、「勝負」が持つ意味、そのものが複雑だ。そして、サッカーは複雑なスポーツである。

 ただし、上記二つの試合において、「落とし所」の中身は大きく異なるものだった。デンマーク対フランスでは、勝ち点6のフランスが1位確定、勝ち点4のデンマークが突破確定を望み、お互いに引き分けOKで、最後は0-0のままプレーを止めた。そのため、勝ち点1で追う、別会場のオーストラリアが涙をのむことになった。ある意味、談合としてはパーフェクト。一分の隙もない。

 ところが、日本のケースは違う。日本はかなり大きなリスクを負っていた。

 0-1でポーランドにリードされた段階で、警告や退場を数値化した「フェアプレーポイント」ではセネガルに勝っていたものの、セネガルが1-0でリードされているコロンビアに同点ゴールを挙げないとも限らない。

2018年6月28日、ポーランド戦の後半、
長谷部(左)に指示を出す西野監督=ボルゴグラード(共同)
 その場合、日本と勝ち点4で並ぶ相手がコロンビアになり、得失点差で日本が敗退してしまう。これを「談合」と呼ぶには、あまりに穴だらけだ。セネガルにも、しっかりチャンスがあるからだ。

 だから、西野ジャパンが、この穴だらけの「落とし所」に身を委ねたとき、筆者は相当ハラハラドキドキした。下手をすれば、この落とし所から、落ちてしまうぞ、と。

 それはベンチも同じで、MF宇佐美貴史によれば「セネガルが追いついたらどうすんねん」という空気はあったらしい。ただし、ピッチ内でプレーしている選手は、細かい状況まではわからない。MF長谷部誠が投入され、「そのままキープしろ! 追加の失点もイエローカードも避けろ!」と指示を受け、遂行した。

 もし、本当にセネガルがコロンビアに追いついていたら? 日本はグループリーグ敗退に終わり、それこそ目も当てられない事態になっていた。試合終了後、この「穴だらけの談合」を指示した西野朗(あきら)監督は強く引きつった顔から、大きく息を吐いた。よほどのプレッシャーがかかっていたのだろう。まさにギリギリの選択。大バクチに勝った。