藤江直人(ノンフィクションライター)

 ゴールラインテクノロジーによる判定が映し出されたテレビ映像では、ゴールライン上にボールの3分の1ほどがかかっていた。ロシアワールドカップ(W杯)の公式球、アディダス社の『テルスター18』の直径は約22センチ。つまり、10センチに満たない差で失点を免れたことになる。

 引き分け以上で決勝トーナメントへ自力で進出できた、日本時間28日深夜のポーランド代表とのグループリーグ最終戦。世界中で賛否両論を巻き起こしている結果をあらためて振り返れば、GK川島永嗣(仏、FCメス)が前半32分に見せたビッグセーブが日本代表を救ったことが分かる。

 日本の守備陣から見て左サイドから放たれたクロスに対して、DF酒井宏樹(仏、オリンピック・マルセイユ)のマークを瞬時に外したMFカミル・グロシツキ(英、ハル・シティ)がヘディングを一閃(いっせん)。角度を変えたボールは緩やかな軌道を描き、ゴール右隅へと吸い込まれていく。

 クロスが送られたとき、川島は左ゴールポスト付近、いわゆるニアサイドにポジションを取っていた。しかし、グロシツキのシュートは逆サイドに飛んでくる。必死に体勢を立て直してダッシュし、最後は185センチ、74キロの巨体を宙に舞わせる。懸命に伸ばした右手で、ボールを必死にかき出した。

 この瞬間、冒頭で記したように、ボールの約3分の2はゴールラインの内側にあった。ポーランドの先制点を阻止した川島は勢い余ってゴール内へ転がり込む。こぼれ球へFWロベルト・レバンドフスキ(独、バイエルン・ミュンヘン)が詰めてきたが、酒井宏がクリアして事なきを得た。

 生中継していたテレビによる試合後のフラッシュインタビューで、川島はこんな言葉を残している。

「この2試合、チームにかなり迷惑をかけていたので、今度は自分がチームを救う番だと思っていた」
ポーランド戦の前半、ポーランドのグロシツキのシュートを好セーブするGK川島=ボルゴグラード(共同)
ポーランド戦の前半、ポーランドのグロシツキのシュートを好セーブするGK川島=ボルゴグラード(共同)
 試合はポーランドに負けた。というよりも、アディショナルタイムを含めた残り約10分の段階で、日本が0-1のスコアのままで負けることを選んだ。同時間帯で行われていたグループHのもう1戦では、コロンビア代表がセネガル代表を1-0でリードしていた。

 この状況のままで終われば、コロンビアが勝ち点6で1位となり、日本とセネガルが勝ち点4で並ぶ。得失点差も総得点もすべて同じ。直接対決の結果も2-2のドローだ。この場合は、今大会から導入されたフェアプレーポイント(FPP)、つまり警告数や退場数の少ないほうが上位となる。

 ポーランド戦で警告を受けたDF槙野智章(浦和レッズ)を含めて、日本は3試合で4枚のイエローカードをもらっていた。対するセネガルは6枚。失点をせず、余計なイエローカードももらわなければ日本の2位が決まる。西野朗(あきら)監督は一世一代の大ばくちに打って出ることを決めた。