藤江直人(ノンフィクションライター)

 偉大な記録が生まれようとしている。日本時間3日午前3時にロシア南部のロストフ・アリーナでキックオフを迎える、ベルギー代表との決勝トーナメント1回戦。31歳のDF長友佑都(トルコ、ガラタサライ)がピッチに立った瞬間、ワールドカップの舞台における最多出場選手の一人となる。

 日本代表が悲願のワールドカップ初出場を果たした1998年のフランス大会を皮切りに、2002年の日韓共催大会、2006年のドイツ大会の10試合すべてで先発。ドイツ大会でグループリーグ敗退を喫した直後に、29歳の若さで現役を引退した中田英寿がロシア大会前における記録保持者だった。

 そして、中田と入れ替わるように、2010年の南アフリカ大会で颯爽(さっそう)とワールドカップでデビュー。前回のブラジル大会、そして2大会ぶり3度目の決勝トーナメント進出を果たした今大会ですべて先発フル出場してきた長友は、日本時間6月28日深夜のポーランド代表戦で中田に肩を並べた。

 ポーランド戦で先発したGK川島永嗣(仏、FCメス)とFW岡崎慎司(英、レスター・シティ)、途中出場したMF長谷部誠(独、アイントラハト・フランクフルト)も通算10試合出場となった。しかし、全試合で先発し、しかもフル出場を続けているのは長友と川島だけだ。

 しかも、中田は1試合だけ、後半途中でベンチへ退いている。チュニジア代表との日韓共催大会のグループリーグ最終戦。自らのワールドカップ初ゴールでリードを2点に広げ、勝利と決勝トーナメント進出を確実なものとした後半39分に、MF小笠原満男(鹿島アントラーズ)と交代した。
セネガル戦の前半、攻め上がる長友佑都=エカテリンブルク(中井誠撮影)
セネガル戦の前半、攻め上がる長友佑都=エカテリンブルク(中井誠撮影)
 攻守両面で真っ赤な炎を放つ左サイドバックとして、不動の居場所を築き上げた長友は、ポーランド戦の後半途中で中田がピッチに立った894分間を超えた。そして、川島とともにプレー時間を930分に延ばし、ベルギー戦でフィールドプレーヤーとして金字塔を打ち立てようとしている。

 日本代表でデビューしてから、10年以上の歳月が過ぎた。2008年5月24日。愛知・豊田スタジアムでコートジボワール代表と対峙(たいじ)した国際親善試合で、当時の岡田武史監督に大抜てきされた。コートジボワールを率いていたのは、奇遇にも後に日本を率いるヴァイッド・ハリルホジッチ氏だった。