清水英斗(サッカーライター)

 後半アディショナルタイム。MF本田圭佑のフリーキックをGKティボ・クルトワがセーブし、コーナーキックになった場面だ。

 左利きの本田が蹴ったボールは、アウトスイング。つまり、ゴールから離れる方向へ曲がる軌道だった。ゴールを直接脅かす可能性は少ない。長身GKのクルトワは、果敢に前へ出て、このクロスを難なくキャッチした。

 すると、それに呼応したMFケビン・デ・ブライネが走りだす。高速ドリブルでピッチを切り裂くと、FWロメル・ルカクのおとりでフリーになった右サイドのMFトーマス・ムニエへパス。さらに、グラウンダーの折り返しをルカクはスルーし、大外から走り込んだMFナセル・チャドリが押し込んだ。

 デ・ブライネのドリブル、ルカクの2度にわたるおとりの動き、ムニエ、チャドリと勝負どころでわき出す爆発的ランニング。「ワールドクラス」の美しいカウンターだった。

 そのスイッチを入れたのは、間違いなくクルトワである。昨今の現代的なGKはシュートストップに優れるだけではなく、スルーパスを防いだり、クロスを捕ったりと、シュートの一つ前の場面にもアグレッシブに飛び出し、プレー範囲を増やしている。その象徴的な存在は、4年前にブラジルで大活躍したドイツ代表GKマヌエル・ノイアーだ。

ベルギー戦後半のアディショナルタイム、
コーナーキックを蹴るMF本田圭佑
=ロストフナドヌー(中井誠撮影)
 このようなプレーが効果的である理由の一つに、カウンターの起点になることが挙げられる。シュートを防ぐ場面とは異なり、相手が前へ飛び出してくるタイミングで、GKが前へ出てボールをキャッチするため、その瞬間に何人かの相手と入れ替わることになる。カウンターとしては絶好の場面だ。そして、素早くデ・ブライネへディストリビューション(配球)を行い、日本選手を何人も置き去りにして、カウンターを成功させた。

 日本は、本田のキックがクルトワの罠にかかったともいえるし、クルトワが捕った瞬間、これが本当に危ないシーンであることを察知できず、戻りの出足で遅れてしまった、ともいえる。

 ほんのわずかの差。世界の舞台では、何がピンチの引き金になるのか。どこまではOKで、どこまではNGなのか。経験がモノを言う。その線引きも、試合の大半ではうまくできていたが、最後の最後、アディショナルタイムの緊迫感と疲労、逃げ切りたいという願望が重なるギリギリの環境下で、適切な対応ができなかった。