開催国代表としてアントラーズが臨んだ2016年12月のFIFAクラブワールドカップ。破竹の快進撃を続け、アジア勢として初めて立った決勝の舞台で、ヨーロッパ代表のレアル・マドリード(スペイン)に2ゴールを見舞ったMF柴崎岳(スペイン、ヘタフェ)とともに名を上げたのが昌子だった。

 一時は逆転に成功し、世界中に驚きを与えたものの、最終的には延長戦の末に2-4で敗れた。ロシア大会でも4ゴールをあげたポルトガル代表のスーパースター、FWクリスティアーノ・ロナウドにはハットトリックを達成された。

 後半終了間際にはそのロナウドがカウンターで抜け出し、アントラーズのゴールに迫った場面があった。必死に追走した昌子がファウルなしで止め、ボールを奪い取る場面をファンの一人として見ていた中村憲剛(川崎フロンターレ)は、昌子に対してこんな言葉を残している。

 「試合ごとに成長していく彼の姿を見ていましたけど、特にレアル・マドリード戦では『最後は自分が守る』という気概を感じました。これだけたくましい日本人のディフェンダーが、若い選手のなかから出てきたことを、率直にうれしく思います」

 もっとも、昌子は心の底から喜べなかった。その後にテレビの向こう側で、ラ・リーガ1部やUEFAチャンピオンズリーグを戦うレアル・マドリード、そしてロナウドの姿を見た時に、もやもやした思いの正体が分かったと明かしてくれたことがある。

 「間違いなく自信になった大会ですし、あの時点では世界一をかけて戦いましたけど、彼らが本気じゃなかったことは対戦した僕たちが一番分かっている。ああいう選手たちともっと真剣勝負ができる舞台に立ちたいとあらためて思ったし、それはやっぱりワールドカップになるんですよね」
鹿島アントラーズでプレーする昌子源=2017年6月、県立カシマサッカースタジアム
鹿島アントラーズでプレーする昌子源=2017年6月、県立カシマサッカースタジアム
 米子北高校(鳥取県)から常勝軍団アントラーズへ加入して8年目になる。青森山田高校(青森県)から加入した同期生、柴崎が瞬く間に居場所を築き上げたのとは対照的に、昌子は我慢の時間を強いられた。

 「高校生の時にできていたことは、プロの世界では通用しないぞ」

 プロの世界に入っていきなり、一からたたき直せという厳しい言葉を浴びせられた。声の主はアントラーズの最終ラインを支え、前年の2010シーズン限りで引退した大岩剛コーチ(現監督)だった。その言葉を額面通りに受け取ることができなかった昌子は、すぐに伸びかけていた天狗(てんぐ)の鼻をへし折られる。

 高校時代はU-19日本代表候補に選出されたこともある昌子だが、最初の3年間はリーグ戦でわずか13試合に出場しただけだった。

 主戦場とするセンターバックではなく、けが人や出場停止者が出た穴を埋めるために、不慣れな左サイドバックで出場したこともある日々を「あのころはホンマにヒヨッ子だったからね」と苦笑いしながら振り返ったことがある。

 「やっぱり自信はあったわけですよ。高校の時にけっこう相手を抑えられていたから。それをそのままプロで出したら、まったく歯が立たんかったよね。(岩政)大樹さんや(中田)浩二さんに、何回同じことを言われたか。何回同じミスをするねん、何でそこでそんな余計な足が出るねんと。僕としては『いやぁ』と言うしかなかったですよね」
 
 歴代のディフェンスリーダーが背負う「3番」の前任者、岩政大樹(現東京ユナイテッドFC)。アントラーズのレジェンドの一人、中田浩二(現鹿島アントラーズ・クラブ・リレーションズ・オフィサー)から落とされた、数え切れないほどのカミナリを糧に昌子は成長を続けてきた。