そして吉田麻也(英、サウサンプトン)とコンビを組むセンターバックのファーストチョイス争い。ロシア行きの切符を獲得した後、槙野智章(浦和レッズ)が台頭し、一時はレギュラーを不動のものとした。その槙野が不在だった昨年12月のEAFF(東アジアサッカー連盟)E-1サッカー選手権では、国内組だけで編成されたメンバーの中でヴァイッド・ハリルホジッチ前監督からキャプテンに指名された。

 優勝をかけた宿敵・韓国代表との最終戦で1-4の歴史的惨敗を喫すると、会場となった味の素スタジアムに駆けつけたファンやサポーターから痛烈なブーイングを浴びせられた。観戦した日本サッカー協会の田嶋幸三会長、Jリーグの村井満チェアマンから「この悔しさだけは忘れないでほしい」と檄(げき)を飛ばされた。味わされてきた艱難(かんなん)辛苦のすべてが、昌子を成長させてきた。

 「今回キャプテンをやらせてもらって、自分の未熟さをすごく感じた。でも、いい経験になった、という言葉で片付けるつもりはない。顔を上げて、ここからはい上がっていくだけなので」

 迎えたワールドカップイヤー。開幕直前に行われたパラグアイ代表とのテストマッチ(オーストリア・インスブルック)で演じた好パフォーマンスで、西野朗監督が描く序列の中で槙野との序列を逆転させた昌子は、コロンビア代表とのグループリーグ初戦で先発フル出場を果たす。

 しかも、前線で脅威を放ち続けた点取り屋ラダメル・ファルカオ(仏、モナコ)を封じ込めた昌子は、先発メンバーの中で唯一のJリーガーだったことと相まって、FIFAの公式サイトでこう報じられた。

 「一番の驚きはゲン・ショウジだ」

 同じ先発メンバーで臨んだセネガル代表との第2戦でも、スピードと強さを併せ持つFWエムバイェ・ニアン(伊、トリノ)と壮絶な肉弾戦を展開。攻めては果敢なインターセプトから、本田の同点ゴールにつながる鮮やかな縦パスを前線へ通した。

 ベルギー戦でも今大会で4ゴールをあげているルカクを、吉田との共同作業で封じ込めた。最後の最後に目の当たりにした残酷なシーンもいつかきっと、あの悔しさがあったからと、笑顔で振り返ることができる時が訪れる。
昌子源とルカク=2018年7月3日、ロシア・ロストフナドヌー
昌子源とベルギーのロメル・ルカク=2018年7月3日、ロシア・ロストフナドヌー
 今大会で与えたサプライズとともに、国際的な評価が急上昇した。もしかすると盟友・柴崎の背中を追うように、ヨーロッパへ活躍の舞台を移すかもしれない。もっとも、国内組から海外組に立場が変わったとしても、昌子の胸中に強く脈打つ信念は変わらない。

 「目の前の試合で、自分が一番いいプレーをしようとは思わない。チームが勝つために何をしなければいけないのかを考え抜くことが、自分のいいプレーにつながる。だからこそ、チームを勝たせることのできる選手にならないといけない」

 次回のカタール大会を29歳で迎える。経験も必要とされるセンターバックとして、ちょうど脂がのり切った年齢と言っていい。悔しさを次世代に伝え、夢の続編を追い求めていくためにも、強さと上手(うま)さ、そして泥臭さを融合させた昌子はロシア大会を通過点として、貪欲に未来へと進み続けていく。