著者 永井文治朗

 「だって4年に1回しかないしね」。先日、街を歩いていて看護学校に通う若い女の子たちがワールドカップの話題で盛り上がっていた。私はしれっと「そのうちの3大会ぐらいしか見てないでしょ」と内心舌を出した。 
 
 ところで、日本-ベルギー戦は「世紀の一戦」だった。ただ、今大会特有のあり得ない配分のアディショナルタイム(前半が1分で後半が4分)ゆえの必然なのか、「ドーハの悲劇」の再来ともいえる状況で日本代表は力尽きた。
 
 とはいえ、この20年間で、日本代表は大きく変わった。今でこそ予選突破が当たり前になり、ベスト8以上を狙うまでになったのは、まさにアディショナルタイムの同点弾で出場を逃した「ドーハの悲劇」からだろう。あのとき、すんなり三浦知良(カズ)やラモス瑠偉らが1994年W杯アメリカ大会に出場していたら、日本代表の歴史は全然違うものになっていたと感じている。

 そしてロシア大会はベスト16で敗退したが、これから日本代表が目標とすべきサッカーはある。フランスだ。サイドから崩し、相手にピッチを走り回らせてジワジワと体力を削る。さらにボール回しで相手をイライラさせ、小突かせたり引っ張らせたりする。
アルゼンチン戦でチーム3点目を決めるフランスのエムバペ=2018年6月30日、カザン
アルゼンチン戦でチーム3点目を決めるフランスのエムバペ=2018年6月30日、カザン
 プレースキックは全員で守り、持ちすぎずワンタッチの連続でつなげる。30秒後の味方の布陣を予測する。なんでそこにいるんだという位置に張る。日本がこの20年間やってきたサッカーそのままだ。あとは精度の問題であり、今まで10回やって3回成功する3割のところを倍の6割に上げれば確実に結果は出る。

 確かに元仏領出身のアフリカ系選手たちと日本人とではフィジカルの差はあるが、絶望的と言うほどでもない。それに酒井高徳のようにそもそも両親とも日本人じゃない選手も代表になっていて体格が良い。

 平均身長からして代表メンバーは、20年前とは違う。そして皮肉にもかなり平均身長を下げているのが、世界最速最高のサイドバックの一人、長友佑都だ。図体だけデカくて走れない選手はそもそも代表に呼ばれない。

 ただ、それ以上に誰がピッチに立っても同じ事ができる信頼関係が重要であり、その日、そのとき一番コンディションが良い選手にピッチに立つ権利を持たせることが大切だ。

 そもそもサッカー選手同士だけで身体能力を比較しない方がいい。身体能力に関しては、今ならメジャーリーグの大谷翔平やフィギュアスケートの羽生結弦と徹底比較したらいい。

 ひょっとしたら別の競技のアスリートにサッカーの役に立つ身体能力が備わっているかもしれないからだ。だとしたら科学的に検証して習得方法を模索するべきだ。サッカー選手にベースランニングさせるというのも一つの方法かもしれない。

 単純にピッチの上をダッシュさせるよりも、状況判断を混ぜながら加速と減速、次の塁を陥れるか、帰塁するかの判断力を磨く。フライやライナーを取るのがうまくなってもサッカーでは何の役にも立たないが、ピンチランナーとして実戦で訓練してみたら脚質が変わって飛躍的にうまくなるかもしれない。

 あるいは箱根は無理でも出雲なり全日本なりの大学駅伝にアンダー23の代表選手たちをオープン参加させてもらえるよう日本陸連にかけあってみるのもいい。パスを繋ぐことと襷(たすき)を繋ぐことは「気持ちを繋げる」という意味で意外と似ている。

 走る距離にしてもピッチの上の90分とそう変わらない。なによりサッカー選手に負けたら陸上部の沽券(こけん)に関わるので刺激になるだろう。

 このためにも結果を出した西野朗監督には総監督として立ってもらい、アシスタントコーチとしてJリーグでの実績(優勝だけでなく、低予算や意識改革での昇格実績など)で日本人を中心に人材を広く募るべきだ。