2018年07月05日 8:56 公開

ロンドン警視庁は4日、英南部ウィルトシャー・エイムズベリーで6月30日に意識不明で発見された男女は、神経剤「ノビチョク」を浴びていたと発表した。今年3月に元ロシア情報将校と娘が近くのソールズベリーで浴びて重体となったのも、「ノビチョク」だった。

警察によると、ドーン・スタージェスさん(44)とチャーリー・ロウリーさん(45)は、エイムズベリーの家の中で意識不明で発見され、危篤状態にあるという。同じ症状の人はほかにいない。また2人が意図的に狙われたことをうかがわせる情報は、2人の「経歴に何もない」と警察は話している。

ロンドン警視庁のニール・バス警視監補は、2人に使われた神経剤が、元ロシア情報将校のセルゲイ・スクリパリ氏と娘のユリアさんが今年3月に英南部ソールズベリーで浴びたものと一緒に作られたものかどうかは確認できていないと述べながら、その可能性は「明らかに捜査対象だ」と話した。

ソールズベリーとエイムズベリーの間の距離は約12キロ。エイムズベリーには世界遺産のストーンヘンジがある。

バス警視監補は、汚染された物体は未発見だが、スタージェスさんとロウリーさんの行動履歴を捜査員が「詳細に点検」し、どこで神経剤を浴びたのか特定しようとしていると話した。

その上で警視監補は市民に対して、不審物を見つけたら決して手に取らないように呼びかけた。

「現時点では、神経剤がいったい何に含まれていたのかまったく分かっていない」と警視監補は注意を促した。

英全国の各警察を網羅する対テロ警察ネットワークがウィルトシャー警察と協力しながら、捜査を主導している。

エイムズベリーでは6月30日、まず午前中にスタージェスさんが家の中で倒れたため救急車が呼ばれた。さらに同日午後、ロウリーさんが体調不良を訴えたため、あらためて救急車が呼ばれた。

ウィルトシャー警察によると、「当初は、汚染されたヘロインかクラック・コカインか何かが2人の体調悪化の原因ではないかと思われていた」という。

警察は、エイムズベリーとソールズベリーの両市内で2人が訪れた場所を、念のための措置として立ち入り禁止にした。

スクリパリ親子の事件後に除染対象となった場所を、スタージェスさんとロウリーさんが訪れたという情報はない。

地元住民は、防護服を着た警官を含め、市内に警官の人数が増えることになると説明を受けた。

英政府主席医務官のデイム・サリー・デイビス教授は、「一般市民への危険はいまだ低いので、市民の皆さんには安心してもらいたい」と記者会見で話した。

スクリパリ親子の事件の経験から、当局はすでに「しっかりした対応方法を確立している」とデイビス教授は述べ、不審物と接触した場合の「アドバイスは前回と同様です。衣類は洗濯して、靴やカバンなどの所持品はウェットティシューなどで拭いてから通常の方法で廃棄してください」と説明した。

「同時期に相当量の(神経剤を)浴びた人にはすでに症状が出ているはずなので、症状が何もなければ医療従事者に相談する必要はありません」

BBCのゴードン・コレラ安全保障担当編集委員は、新たな神経剤事件は、市民の間に健康不安を引き起こす「きわめて重要なものだ」と話す。

「このノビチョクは3月のスクリパリ親子攻撃で使ったものの残りだというのが、一番あり得る仮説だ。親子攻撃のために用意して、廃棄したものかもしれない。公園とか民家で。そこで今回の2人が接触してしまったのかもしれない」

コレラ記者はさらに、今回の事件で新たにノビチョクを発見したことで、「どこから持ち込みどうやって調合したものか」対テロ捜査当局が手がかりを得るきっかけになるかもしれないと、付け足した。

サジド・ジャビド内相は、被害に遭った2人のことを思っていると述べ、ソールズベリー地区病院の救急医療チームに謝意を伝えた。

今回の事件は「ソールズベリーで3月に起きた無謀で野蛮な攻撃」に続くものだと批判した上で、「政府にとっての最優先は地元住民の安全だが、公衆衛生庁がはっきり説明しているように、一般市民へのリスクは低い」と強調した。

内相は、5日にも政府の緊急事態対策委員会(COBRA)を招集する方針を示した。

(英語記事 Wiltshire pair poisoned by Novichok nerve agent