最後まで攻めたのは、ポーランド代表とのグループリーグ最終戦が関係していたのかもしれない。1点を追う状況で攻撃を放棄し、アディショナルタイムを含めた後半の最後の約10分間を、リスクを冒さないパス回しに終始。あえて敗北を受け入れ、同時間帯に戦っていたセネガルとの2位争いを、今大会から導入されたフェアプレー・ポイントの差で制した。

 引き分け以上ならば、日本は自力でグループリーグを突破できた。それだけに消極的に映る戦い方に対しては、それまで日本を称賛していた世界中のメディアから、手のひらを返すようなバッシングが浴びせられた。日本国内でも賛否が真っ二つに分かれる状況を生んだほどだ。

 西野監督としては、日本が追いつく確率、攻勢に出てカウンターで失点する確率、コロンビアがそのままセネガルを下す確率、セネガルが同点に追いつく確率――の4点を冷静かつ迅速に比較。その中からコロンビアが勝利する確率が最も高いと判断し、他力に委ねる前代未聞の作戦を、ベンチで休養させる予定だった長谷部をピッチへ送り込んでまで徹底させた。

 もしセネガルが同点に追いついていれば、日本は敗退していた。勇気を振り絞った究極の選択を、指揮官は試合後のテレビのインタビューで「本意ではない」と位置づけた。グループリーグ突破を果たしたにもかかわらず、不本意な戦いを強いたとして翌日には選手たちへ謝罪している。

 そうした伏線や、延長戦に入れば体力面でベルギーの後塵を拝するという判断も手伝って、90分間での勝利を目指した。結果として3度目の挑戦でもベスト8の壁にはね返されてしまったが、だからといって西野ジャパンとして実際に活動してきた、千葉県内における国内合宿をスタートさせた5月21日以降の46日間が否定されるわけではない。

 選手たちとのコミュニケーションや信頼関係がやや薄らいできた、という不可解な理由でヴァイッド・ハリルホジッチ前監督が電撃解任されたのが4月7日。その5日後に慌ただしく就任した西野監督は、合宿初日に「それまでのチーム力だけではロシアへ向かえない」と危機感を募らせた。

 「ブラジル大会での敗戦から選手たちやサッカー界が試行錯誤してきた中で、ロシアの切符を取った大きな財産もがある。その後も強化を継続してきた中で、(技術委員長として)チームを客観的に見ていて、素直にそう思いました。ただ、選手それぞれの能力は非常に高く、培ってきたことにプラス、短い準備期間で何かを足すことが対抗できるのではないかと」
コロンビア対日本。本田圭佑(左)と交代し、西野朗監督(中央)に労われる香川真司=2018年6月19日、サランスクのモルドビア・アリーナ (撮影・中井誠)
コロンビア対日本。本田圭佑(左)と交代し、西野朗監督(中央)に労われる香川真司=2018年6月19日、サランスクのモルドビア・アリーナ (撮影・中井誠)
 西野監督が言及した「財産」とは、ハリルジャパンで3年間にわたって叩き込まれてきた縦への速さと、フランス語で「1対1の決闘」を意味するデュエル。ゆえに代表メンバーの顔ぶれはほとんど変わらず、さらにボーダーライン上にいた本田やFW岡崎慎司(レスター・シティー)も招集した。

 必然的に平均年齢は跳ね上がり、メンバー発表時の28・17歳は日本が臨んだ6大会の中で最も高くなった。一部から「おっさんジャパン」と揶揄される中で、日本を発った6月2日に乾が30歳に、開幕直前の13日には本田が32歳になって平均年齢をさらに押し上げた。