清水英斗(サッカーライター)

 2-0は安全なスコアだった! 私たち日本人にとっては、ショッキングな事実だ。

 W杯準々決勝のウルグアイ対フランスは、前半40分にDFラファエル・バランがヘディングで先制ゴールを挙げると、後半16分にMFアントワーヌ・グリーズマンがブレ球ミドルシュートで追加点を挙げ、2-0へ。そして、そのまま終わった。

 後半の残り30分は、何も起こらなかった。いや、起こさせなかったのだ。試合をコントロールし、閉じる。フランスのゲーム戦略は完璧だった。手が届かなかった「ベスト8の戦い」。ベルギー戦で2-0から逆転を許した日本代表にとって、足りなかったゲーム・クオリティーが、そこにはある。

 ゲームの前半、興味深い戦術を見せたのはウルグアイのほうだった。「4-4-2」のシステムで、MF4人が、ディフェンス時は真ん中にギュッと固まったひし形を形成するが、攻撃に転じると、MFナイタン・ナンデスが右サイドのタッチライン際に開く。トップ下のMFロドリゴ・ベンタンクールも真ん中にポジションを取り、全体が右サイドに固まった状況を作り出した。「ワンサイド寄せ」である。

 前半のウルグアイの攻撃エリアを、データで確認すると、中盤は右サイドが25%、真ん中が16%、左サイドは5%を記録。前線も右サイドが11%、真ん中が9%、左サイドが5%を記録した。つまり、ウルグアイが右サイドに攻撃を固めたのは、データからも明らかだ。これは過去の試合に共通する傾向ではなく、このフランス戦特有の現象だった。

 なぜ、ウルグアイはこのような「ワンサイド寄せ」を行ったのか?

 それはプレーエリアを、コンパクトに縮めるためだ。片方のサイドに寄ることで、「1対1」を「多対多」に近づけ、身体の大きな選手をそろえたフランスに対し、狭いエリアの敏しょう性で上回る。仮にボールを奪われたときも、味方が近くにいて取り返しやすい。さらに相手のキープレーヤーであるFWキリアン・エムバペを、逆サイドで孤立させる効果もあった。全ては戦術である。

 そのウルグアイにとって、前半は決して悪くなかった。前半40分にグリーズマンの絶妙なフリーキックからバランにヘディングを許し、セットプレーで失点したものの、直後にウルグアイもフリーキックで決定機を迎えている。しかし、これはフランスGKウーゴ・ロリスのスーパーセーブに防がれた。
ウルグアイ戦の後半、2点目のゴールを決めるフランスのグリーズマン=ニジニーノブゴロド(ゲッティ=共同)
ウルグアイ戦の後半、2点目のゴールを決めるフランスのグリーズマン=ニジニーノブゴロド(ゲッティ=共同)
 事実、1-0でフランスがリードして折り返したが、前半のシュート数はウルグアイが7本(枠内4本)、フランスが6本(枠内1本)と、チャンスはしっかりと作れている。スーパーセーブさえ無ければ、間違いなく1-1だった。

 とにもかくにも、1点のアドバンテージを得たフランスは、ここから老獪(ろうかい)さを見せる。まず、前半に孤立しがちだったエムバペが、ポジションを離れて逆サイドまで顔を出し、相手のワンサイド戦略に消されないように動きを修正した。