2018年07月09日 11:39 公開

英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)交渉を2016年夏から担当してきたデイビッド・デイビス・ブレグジット担当相が8日、辞任した。保守党のスティーブ・ベイカー・ブレグジット担当閣外相も続いて辞任した。

ブレグジットについては、テリーザ・メイ首相が離脱後のEUとの関係について閣内合意をまとめたばかり。メイ首相は、離脱後もEUとの貿易や人の移動などについてEU規則との協調継続を受け入れる計画を閣僚に提示。離脱推進派からは、「ソフトすぎる」と批判されていた。

メイ内閣は6日、ロンドン北西にある首相公式別荘「チェッカーズ」に集まり、EU離脱後のEUとの関係について方針を協議した。

デイビス氏は首相への辞意表明で、「現在の政策や戦術の方向性」からすると、英国が本当に関税同盟や単一市場を離脱するとは「どんどん思えなくなっている」とメイ氏の姿勢を批判した。

元担当相は、離脱交渉に対する政府の姿勢は、結局のところEU指導部からの「要求に譲歩し続ける」ことにつながるのではないか、そうならないとは「納得できない」ままだと述べた。

これに対してメイ首相は、「6日の閣議で合意した政策について、あなたの見解に私は同意しない」と回答した。

首相は、デイビス・ブレグジット担当相の辞任は「残念」だとしつつ、「この国のEU離脱の形を決めるため(中略)あなたがしてくれたすべてのことに温かく感謝したい」と加えた。

まったくのカオス

離脱派のピーター・ボーン下院議員(保守党)は、デイビス氏の辞任を「信念のある、勇敢な決断」とたたえ、「首相のブレグジット提案は名ばかりで、受け入れがたい」と批判した。

野党・労働党のイアン・レイブリー委員長は、「まったくのカオスだ。テリーザ・メイにはなんの指導力も残っていない」と述べた。

労働党のジェレミー・コービン党首は、メイ首相には「ブレグジット実現は無理だ」と批判した。コービン党首はツイッターで、「これほど大切な時にデイビッド・デイビスが辞任するとは、テリーザ・メイに何の指導力も残されていないことの表れで、その下でブレグジット実現は無理だ。政府が混沌(こんとん)状態にあるのに(メイ首相が)政権にしがみつくなら、国民に仕えるより自分自身のために残ろうとしているのがあらわになる」と書いた。

https://twitter.com/jeremycorbyn/status/1016104220594982913

首相は9日にも下院で議会に対し、6日にチェッカーズでの閣議で合意した戦略こそ英国にとって「正しいブレグジット」だと説明する見通し。

BBCのローラ・クンスバーグ政治編集長によると、デイビス氏は8日に首相官邸での会議に出席後、政権にこれ以上留まるのは無理だと結論した。デイビス氏は「官邸の対応に激怒していたという」とクンスバーグ編集長はツイートした。

https://twitter.com/bbclaurak/status/1016093640375054336

クンスバーグ編集長は、デイビス氏が「政府内で不満を募らせていたのは、もうかなり前から秘密ですらなくなっていた。しかし首相がチェッカーズで閣僚たちと合意した内容は、自分が求めるよりEUとのつながりを緩やかに残すものだった。そのため、これ以上の留任は無理だと判断するに至った」、「意外な展開ではないものの、政府のブレグジット戦略がどこまで堅牢なのか、疑問視されることになる」と指摘する。

ブレグジット国民投票の立役者の一人で、その後の総裁選をメイ氏と争った離脱派のマイケル・ゴーブ環境相が、デイビス氏の後任として有力視されているという。

ゴーブ氏は8日、BBCに出演し、メイ首相とそのブレグジット計画を支持するよう保守党議員たちを説得しているのだと述べていた。

残留派の政治家からは、ブレグジットの是非について国民投票をやり直す必要があり、デイビス担当相の辞任はその証拠だという意見も出た。

国民投票のやり直しを強く主張してきたアドニス男爵上院議員(労働党)はツイッターで、「DD(デイビッド・デイビスの略)辞任で、ブレグジットの苦しみを終わらせるための国民投票が大きく実現に近づいた。ミセス・メイを人質にとっている離脱派は仲たがいし出していて、離脱条約に対する過半数の支持など議会に存在しない」と書いた。

野党・自由民主党は、メイ内閣のブレグジット合意の是非を問う国民投票の実施を求めて、請願に賛同するよう署名を求めた。「デイビッド・デイビスの辞任は、この保守党ブレグジットがいかに混沌状態にあるかをあらためて示している。EUに残る機会のため、このばらばらなブレグジットに関する最終決定権は、皆さんにあるべきだ」と同党は国民に呼びかけている。

一方で、多くのEU離脱派議員は、デイビス担当相の辞任を歓迎した。ウィリアム・ラッグ下院議員(保守党)は、デイビス氏の辞任は「正しい行動だ」と評価。「ブレグジットのために戦う」ことを理由に政権ポストを辞任したアンドレア・ジェンキンス下院議員(保守党)も「素晴らしい知らせだ」と喜び、「デイビッド・デイビスには辞任するだけの信念とガッツがあったわけで、お見事」とたたえた。

スコットランド国民党(SNP)のイアン・ブラックフォード英議会院内総務は、「ハード・ブレグジット(EUときっぱり決別するブレグジット)はよろしくないと証拠が募っている。これにしっかり配慮した計画を推進するよう」、メイ首相の「まともな」対応を求めた。

(英語記事 Brexit Secretary David Davis resigns