サッカーを伝えるメディアというくくりで見ても、例えばこの準決勝もボールを持った時のフランスのFWキリアン・エムバペとベルギーのアザールは確かに目立っていた。彼らは違いを生み出すことのできるタレントであり、世界的スター選手としてこの先も世界のサッカー界をけん引していくだけの異彩を放つ。

 しかし、例えばフランスの若きエース、エムバペの爆発的なスピード、スプリント能力を引き出すため、チームとして守備をしながら右サイドにスペースを作り、ボールを奪った瞬間に彼の前方のスペースを活用する攻撃戦術をチームに落とし込んでいるディディエ・デシャン監督の手腕や、そのために脇役の座を買って出ているグリーズマンの存在は見逃してはいけない。

 バロンドール(欧州年間最優秀選手)を独占するFWリオネル・メッシとFWクリスティアーノ・ロナウドの2人に割って入る3番手の最有力として、今や世界が認めるグリーズマンは、ここまで大会3得点を奪いながらもチームや大会の主役とまではなりきっていないように映る。

 しかし、試合を重ねる事にグリーズマンは攻守で気の利いたプレーを実行し、チームへの貢献度を高めている。この準決勝でも前線の3選手の中でただ1人、10キロ超えとなる「10・9キロ」の走行距離をたたき出し、特に終盤は守備における貢献を随所に披露した。

 フランスの1トップとしてグループリーグ第2戦(対ペルー)から先発しているFWオリヴィエ・ジルーも同じで、今大会はいまだ無得点でシュートの本数自体も少ない。しかし、デシャン監督が「チームのバランスを取るために多くのことを行ってくれている」と擁護するように、彼もチームとして得点を生み出すために、前線で特長である高さ、身体の強さを全面に出し、ポストプレーやつぶれ役としてチームに貢献している。

 フォワードがゴールという数字で評価されることは致し方ないことでもあるが、チームの中でどういうタスクを背負い、そのタスクを実行することによってチームや攻撃がどの程度機能しているのかを注意深く見ていけば、数字だけではない選手の確かな評価もしっかりと出てくるはずだ。だからこそ、サッカーというスポーツは単純なデータだけで選手の評価はできない。ましてや「チーム戦術」を度外視し、選手単体で個人評価や採点することは本来できない。
攻め上がる、フランス代表のアントワヌ・グリーズマン=2018年7月、ロシア・サンクトペテルブルク(撮影・中井誠)
攻め上がる、フランス代表のアントワヌ・グリーズマン=2018年7月、ロシア・サンクトペテルブルク(撮影・中井誠)
 ある意味でフランス、ベルギーのような強豪国になれば、出場している22人、どの選手をフォーカスしても何かしらを語ることができる。22人のみならず、ベンチに座る選手も含めてメンバー23名全員がスター選手であり、それだけ豪華なチームなのだ。

 決勝点がコーナーからディフェンダーが決めたこともあり、この準決勝は日本のメディアが取り上げやすいスター選手の目立った活躍が、一見なかったように映る「渋い試合」となった。

 だからこそ、改めてグリーズマンやジルーのような脇役の機能性が勝敗を分けたことに着目すべきであろう。それこそがサッカーの持つ奥深さであり真の面白さでもあるのではないだろうか。