2018年07月12日 12:15 公開

フィル・マクナルティー、BBCサッカー筆頭記者

サッカーのイングランド代表は11日、モスクワで行われたワールドカップ(W杯)ロシア大会準決勝でクロアチア代表と対戦し、延長戦の末1-2で敗れた。1966年以来のW杯決勝進出を目指したイングランドの戦いが終わった。

ギャレス・サウスゲイト監督に率いられ、1990年イタリアW杯(西ドイツにペナルティキック(PK)戦で敗北)以来の準決勝進出を果たしたイングランド代表は、試合開始わずか5分でDFキーラン・トリッピアーが約18メートルのフリーキックをゴールに突き刺して先制に成功。完璧なスタートを切った。しかし後半23分、ペリシッチのシュートで同点にされると、試合はそのまま延長戦に突入した。

すると、イタリア・セリエAのユベントスに所属するクロアチアFWマリオ・マンジュキッチが延長後半4分、FWイバン・ペリシッチがヘディングでペナルティエリア内に送ったボールをゴールに蹴り込み、決勝点を挙げた。

試合終了の笛が鳴ると、W杯優勝の夢を失ったイングランドの選手たちはやるせない表情を浮かべた。今大会でイングランドは偉大な誇りと名声を手に入れたものの、選手とサウスゲイト監督の顔には敗北の痛みが刻まれた。

クロアチア代表ははっきりと対照的な、歓喜に満ちた表情を浮かべた。クロアチアは15日夜(日本時間16日深夜0時)、モスクワでフランスとW杯決勝を戦う。

大会前には想像もされなかったが、イングランドは大方の予想に反して、準決勝まで上り詰めた。しかし、経験豊富なクロアチアに敗れた。

イングランドFWハリー・ケインの豊かな才能も、リードを2点に広げる大チャンスの場面では発揮されなかった。MFジェシー・リンガードも得点機でシュートを外し、チャンスをふいにしてしまった。

イングランドが得点の機会を逃したことで、クロアチアは自信を深めていく。

ハーフタイムを過ぎるとイングランドは勢いを失った。ペリシッチがアクロバティックな体勢からDFカイル・ウォーカーの頭を越すゴールを決め、試合は同点になった。

その後もクロアチアは、ルカ・モドリッチを中心に試合の主導権を握り、イングランドはさらに勢いを弱めていく。ペリシッチが後半27分に放ったシュートはポストに当たり、マンジュキッチによる後半38分の右足シュートはイングランドGKジョーダン・ピックフォードが見事なセーブで防いだ。しかし延長後半4分、延長戦の終了まで11分を残し、マンジュキッチが決定的なゴールを叩き込んだ。

32歳のマンジュキッチは、ペリシッチがペナルティエリア内に上げたボールにDFジョン・ストーンズよりも早く追いつくと、ピックフォードの逆を突いてシュートを決めた。イングランドにはなす術が無かった。

決勝進出を逸したイングランドは14日、サンクトペテルブルクでベルギーと3位決定戦を戦うことになった。

イングランドの誇りと痛み

52年間到達できなかった高みまであとわずかのところで希望を絶たれたイングランドの落胆は、チャンスを逃したと感じるたびにこれからも強くなっていくだろう。

モスクワでの準決勝、前半はイングランドが試合を支配していた。クロアチアは当初、前の2試合で延長戦とPK戦を戦った身体的な疲労で、調子が悪そうに見えた。イングランドとしては、この決定的な段階で試合を決められていたはずだと、いずれ振り返ることになるのだろう。

しかしクロアチアは後半に行くに連れて、大きく調子を上げていった。ズラトコ・ダリッチ監督率いるチームは試合終了までには、失速したイングランドよりも精力的に動き、脅威をもたらすようになっていた。

イングランドの期待は熱狂的なまでに、最高潮に達していた。試合を支配している間にその後押しを生かせなかったことを、チームは悔やむだろう。

試合終了後、サポーターに挨拶へ向かったサウスゲイト監督とイングランドの選手たちの痛みを和らげられるものは何もなかった。ただ、現地まで応援に訪れたファンの反応は、ロシアでイングランドが成し遂げたことの大きさを示していた。

イングランドのファンは一斉に立ち上がり、主要国際大会で1996年のサッカー欧州選手権(ユーロ)以来最高の成績にスタンディング・オベーションで称賛を送った。 今大会の成績は、グループステージ敗退を喫した4年前の2014年ブラジルW杯や、ベスト16で伏兵アイスランドに敗れた2016年ユーロの屈辱とは大きく異なるものだった。

サウスゲイト監督と選手たちは見事なパフォーマンスを見せた。イングランドの成長における次の段階への楽観論を取り戻すのに十分な活躍だった。

1試合が長すぎた?

クロアチアに対するイングランドの敗北は、英プレミア・リーグの長いシーズンと今大会ロシアでのこれまでの試合に多くを捧げてきた選手たちにとって、長すぎる試合となったのが原因のように思われる。

決勝トーナメントこれまで2試合での奮闘を考えれば、クロアチアの準決勝での努力は見事だったと強調するべきだ。ただし、イングランドは試合が進むにつれ消耗していったように見えた。

イングランド主将を務めたケインは全力を尽くしたが、鋭さはなく、W杯優勝の野心を再点火する火種を探すクロアチアにとって、大きな脅威とはならなかった。

MFデレ・アリも立ち上がりは好調だったが、試合序盤を過ぎるとエネルギー切れに見えた。リンガードも同様で、FWマーカス・ラッシュフォードの途中出場もイングランドに火をつけることは出来なかった。

イングランドはFWラヒーム・スターリングが目立ったプレイを見せるなど、前半は暴れまわる準備万端といった様子だった。しかし後半開始からは元気がなくなり、クロアチアが勢いづくのを許した。試合終盤には、クロアチアは止められなくなっていた。

サウスゲイト監督は14日にサンクトペテルブルクで行われるベルギーとの3位決定戦に向け選手たちを奮起させなければならない。落胆の大きさや、苦い敗戦を味わったばかりの生々しい感情を思えば、難しい仕事だ。

イングランドの次の一歩

イングランドは14日の今大会最終戦を終えた後にロシアを去る。チームはここ数年の恥を拭い去り、最高レベルの評判を得た。

サウスゲイト氏は監督として成長を続け、今大会で素晴らしい活躍を残した。ピックフォード、DFハリー・マグワイア、そして本当に素晴らしかったトリッピアーといった選手たちも、その功績で新たな尊敬を手にし、名声を高めた。

イングランドは、サウスゲイト監督の謙虚で成熟した指導法を反映し、選手たちにまとまりのある組織と認識されるようになった。サウスゲイト監督が開発し、要求してきたプレイスタイルは、チームの未来にもいい糧になるだろう。

専門家のほとんどは、今大会では準々決勝に進出できれば上々の成果だと考えていた。ベスト4に残ったのは称賛されるべきだ。

試合を引き分けで終えられ、PK戦となれば、イングランドがW杯決勝にたどり着く可能性があったのは疑うことのできない事実だ。ただ、チームにはそこに到達する力がなかった。だが、未来は明るく、希望に満ちている。

「壁を破ってきた」

イングランドのギャレス・サウスゲイト監督:

「今は全員が敗北の痛みを感じている。ここまで来れるとは正直思っていなかったが、実際ここまで来て、我々が試合で見せたような良いプレイをしたら、人生のチャンスを掴みたくなるものだ。控え室は今、つらい場所になっている」

「選手たちを本当に誇りに思う。2年前(のユーロ)と異なるサポーターの反応は、我々が戦った道のりを母国が誇りに思ってくれていると示している。そのうち前向きなに捉えられることも多く出てくるだろうが、今はそんな風に考えるのは難しすぎるし、早すぎる」

「まずは結果に苦しまなければならない時もたまにはある。我々が達成してきたことを本当に誇りに思う。これ以上は望めなかった。この数週間で、選手たちはたくさんの壁を破ってきたのだから」

セットプレイの専門家――統計から

  • イングランドはこれで、戦った主要大会の準決勝5回のうち4度敗北を喫した。1968年ユーロのユーゴスラビア戦、1990年W杯の西ドイツ戦、1996年ユーロのドイツ戦、2018年W杯のクロアチア戦で敗れている
  • クロアチアはW杯5回目の出場で初の決勝進出となる
  • イングランドは2000年代になってから国際大会でクロアチアに3度負けている。この敗戦数はイングランドが対戦してきた国の中で最多
  • マリオ・マンジュキッチの決勝点は、イングランドがW杯で許してきた失点の中で最も遅い時間帯に生まれた(108分3秒)
  • キーラン・トリッピアーは、2006年ドイツW杯でのデイビッド・ベッカム以来初めて、イングランド代表として直接フリーキックで得点した。ベッカムは2006年、エクアドル戦でフリーキックを決めた
  • イバン・ペリシッチはクロアチア代表として主要大会で10点に関与している(6ゴール4アシスト)。この関与数10回は、ダボル・シュケルと並ぶ記録(シュケルは9ゴール1アシスト)
  • 試合開始から4分44秒後に生まれたトリッピアーの得点は、W杯準決勝での得点としては1958年スウェーデン大会での記録に次ぐ早さだった(スウェーデンW杯準決勝のブラジル対フランスで、ブラジルのババが開始2分に得点している)
  • クロアチアは1990年イタリアW杯でのイングランド以来となる、3戦連続で延長戦を戦ったチームとなった
  • イングランドは今大会、セットプレイから9得点を挙げた。W杯1大会での記録としては、1966年以来最多得点
  • 今大会で延長となった5試合のうち4試合は、イングランドかクロアチアどちらかが戦った(残る1試合はスペイン対ロシア)

(英語記事 World Cup 2018: Croatia v England