清水英斗(サッカーライター)

 W杯に「史上最長のファイナリスト」が誕生した。決勝トーナメント1回戦のデンマーク戦、準々決勝のロシア戦と、クロアチアはともに延長戦の末にPK戦を制して勝ち上がり、この日の準決勝イングランド戦を迎えていた。

 イングランドに先制を許したクロアチアだったが、後半23分にFWイバン・ペリシッチが同点ゴールを決め、3試合連続の延長戦に突入した。言うまでもなく、クロアチアは満身創痍(そうい)だったが、選手自身はそれをおくびにも出さない。かえって不屈の精神を発揮し、逆にコンディションで優位に立つはずのイングランドに襲いかかったのである。

 同点弾の後は、むしろクロアチアの積極性すら目立った。すると延長後半4分、クロアチアはFWマリオ・マンジュキッチが逆転ゴールを挙げ、2-1。スタジアムは歓喜の渦へ。

 延長戦で4枚目の交代カードを切り、粘りを見せたいイングランドだったが、直後にDFキーラン・トリッピアーが負傷でプレー不可能になるアクシデントが起きる。最後は10人になり、反撃の手を出せないイングランドは沈黙。不屈のクロアチアが、衝撃的な決勝進出を決めた。

 3試合連続で延長戦を戦い、決勝にたどり着いたのは、クロアチアが歴史上初めてのチームである。

 それにしても、前半が終わった時点では、この展開は予想していなかった。それまではイングランドのパーフェクトゲームだった。前半5分にトリッピアーがフリーキックで先制ゴールを挙げたことに加え、試合のコントロールが完璧だったからである。
イングランド戦の延長後半、決勝ゴールを決めるクロアチアのマンジュキッチ=モスクワ(共同)
イングランド戦の延長後半、決勝ゴールを決めるクロアチアのマンジュキッチ=モスクワ(共同)
 カギを握ったのは、3バックの真ん中に立つDFジョン・ストーンズだ。ビルドアップ時に3バックを常に維持することはなく、機を見て相手センターフォワード、マンジュキッチの裏へ入り、中盤のアンカーのような場所にポジションを取った。

 この動きで相手MFのルカ・モドリッチと、イバン・ラキティッチを引きつける。すると、クロアチアの中盤に大きなスペースが空いた。イングランドは中盤でスペースと数的優位を獲得し、快適にボールを運ぶことができた。