杉江義浩(ジャーナリスト)

 今回の「平成30年7月豪雨」は、西日本を中心とした各地で、何十年に一度という驚くべき雨量で甚大な被害をもたらし、未曾有の大災害となった。すでに死者は200人、安否不明も60人超となり、現在も懸命の捜索活動が続けられている。

 安倍晋三首相は、被災自治体からの要請を待たず、国が支援物資を送るプッシュ型支援で、20億円を支出しエアコンや水などを被災地に送るよう指示した。また、被災地のコンビニエンスストアなどへの物資の輸送車両を緊急車両の扱いにする考えを示した。

 東京にいて幸いにも豪雨の実感を全く持たないでいた私も、8日から9日にかけて、これは大変なことになったと、NHKの画面に目が釘付けになっていた。人命に関わる災害報道はNHKの独壇場だ。

 7月9日の朝、毎日楽しみにしていた朝ドラ『半分、青い。』もL字画面(テレビの画面に青い帯で緊急ニュースを入れ、本編の番組画面を4分の3程度に縮小して放送する編成)になり、正直言って私はドラマを存分には楽しめなかった。

 それでもNHKには国民の生命・財産を守るための情報を提供するという、極めて優先度の高い任務があり、9日の『半分、青い。』の放送中にも、死者88人安否不明58人という情報は提供され続けた。

 安否不明というのは、昔は行方不明と呼ばれた。子供の頃の私は行方不明と聞いて、どさくさに紛れて家出する人がそんなにいるのか、と大きな勘違いをしていた。もちろん、災害における安否不明とは、残念ながら死亡している可能性が大きく、遺体さえも発見してもらえない人であったりもする。『半分、青い。』を見ながら、不明の人が無事に救出されることを祈りつつ、内心この時点で死者数は三桁に達するだろうと懸念していた。
豪雨で水に浸かったままの住宅地=2018年7月8日、岡山県倉敷市真備町(小型無人機から)
豪雨で水に浸かったままの住宅地=2018年7月8日、岡山県倉敷市真備町(小型無人機から)
 9日の『半分、青い。』の番組そのものは、L字画面で見づらかった。だが、刻一刻と変わる危機に、私はリアルタイムで接することができ、さすがは災害報道のNHKだと信頼感を覚えたのである。

 ところが、同じ9日でも夜になるとNHKは一変した。人気娯楽番組である『鶴瓶の家族に乾杯』がL字画面になることもなく、通常画面で放送されていたのである。災害関連の字幕もない。確認したところ、この時点で死者114人、重体3人、安否不明61人であった。なんと朝ドラが放送された時点よりも死者数、安否不明者数ともに増えているではないか。当然ながら捜索活動も続けられていることだろう。

 いったい何を考えてNHKは災害報道体制を、この段階でやめてしまったのだろうか。安否不明の人がすべて発見され、捜索活動が終結したのなら、理解できる。しかし、実際には捜索活動はまっただ中で、安否不明の人がどんどん増えつつある状況だったのだ。