篠田博之(月刊「創」編集長)

 ユーチューブのネトウヨ系動画チャンネルが次々とヘイトとみなされて凍結されているという。右派言論人として知られる作家、竹田恒泰さんのチャンネルもアクセスしても見られなくなっている。

 ネット掲示板「2ちゃんねる」を改称した「5ちゃんねる」の「なんJ」こと「なんでも実況J板」などの利用者たちが、ヘイト動画を見つけてはユーチューブ側に報告。ユーチューブが規定に従ってそれを次々と凍結、削除しているらしいのだが、それが相当の数に上っているという。

 しかも、ヘイトと思われる動画を次々と報告している「なんJ民」たちは、それをある種の「祭り」として楽しんでいるという。この感覚はネットならではだ。

 このユーチューブをめぐる動きは、ネットでは話題になっているのだが、新聞などの既存メディアはまだほとんど取り上げていない。私は、自身が編集長を務める月刊『創』7月号の連載コラムに精神科医の香山リカさんが書いているのを読んで知ったが、周囲でも「知らなかった」という人が多い。香山さんの原稿のタイトル自体が「あなたは『ヘイト動画大量削除』を知っているか」だ。

 最初にその話を知った時、「これはすごい」と思った。先頃、出版界で大きな話題になったマンガの違法サイト問題でも、それを国家が介入して規制することには反対する声が多く、ネットをめぐる規制やルールについてはいろいろな議論がある。

 だが、「なんJ民」のような利用者が自主的に声をあげる分には問題がない。というか、ネットの世界の内部からこういう動きが出てきたことは注目すべきことといえる。
5ちゃんねるのトップ画面。ネコが「2」を蹴飛ばし「5」に変わるアニメーション
5ちゃんねるのトップ画面。ネコが「2」を蹴飛ばし「5」に変わるアニメーション
 私もこの2~3年、ネットでの発信が増え、経験してみて実感したが、インターネットというのは本当に革命的な道具だ。よくグーテンベルグの印刷技術の発明に匹敵すると言われるが、もしかするとそれ以上かもしれない。

 何が革命的かというと、これまで既存のマスメディアが、新聞社や放送局など特定の業者に占有されていたのに対して、インターネットは発信手段を一般市民に解放したことだ。

 これまでは一部のメディア企業が、情報を発信するだけでなく、情報の価値づけを行ってきた。市民社会の出来事は、メディアに取り上げられることで、初めて社会的事実として流通するという仕組みだった。市民の声を吸い上げる投稿欄などもあったが、どれを掲載するかは新聞社などが決める。マスメディア企業はある意味で特権を得ている存在だった。

 もちろんチラシなど市民の情報発信の手段はあるにはあったが、影響力を考えれば、新聞社やテレビ局などの企業が情報発信機能を圧倒的に支配していたのは間違いない。インターネットは、それを一般市民に解放したと言ってよい。