2018年07月16日 11:17 公開

フィル・マクナルティー、BBCサッカー筆頭記者(ロシア・モスクワ)

サッカーのフランス代表は15日、ロシアで行われたワールドカップ(W杯)ロシア大会決勝戦でクロアチア代表と対戦し、4-2で勝利した。ルジニキ・スタジアムでの手に汗握る熱戦でクロアチアの果敢な挑戦を退け、フランスが2度目のW杯優勝を果たした。

クロアチアは1時間ほどは互角に立ち向かったが、ディディエ・デシャン監督が率いるフランス代表は乗り越えられない差を見せ付け、母国開催だった1998年フランスW杯以来の優勝を手にした。

デシャン監督は20年前に優勝した時の、代表主将だった。今回の勝利で、選手と監督の両方としてW杯に優勝。史上3人目の偉業を果たした。

クロアチアは運に見捨てられたと感じただろう。しかし最終的にはフランスが、パリにおける2016年サッカー欧州選手権(ユーロ)決勝でポルトガルに敗れた記憶を、勝利で消し去った。

近年で最も刺激的なW杯決勝のひとつだった。雷が鳴り響くなか、1958年スウェーデン大会以降で最大となる合計得点、ピッチへの侵入者、そして結果に大きな影響を与えたビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)による賛否両論の介入もあり、クロアチアとフランスは心奪われる試合を繰り広げた。

フランスは前半18分、FWアントワーヌ・グリーズマンのフリーキックがクロアチアFWマリオ・マンジュキッチの頭に当たったことで、オウンゴールによるリードを奪った。しかし前半はクロアチアの方がフランスを大きく上回っていた。前半28分にFWイバン・ペリシッチの左足で同点に追いついたのも、当然のことだった。

ハーフタイム7分前の前半38分、グリーズマンのペナルティキック(PK)でフランスが再びリードを奪ったため、クロアチアは不当だと不満を抱き続けた。このPKは、VARを確認するために大幅に試合を中断した挙句、ネストル・ピタナ主審がペリシッチのハンドを認定して与えたものだったからだ。

目が離せない展開となった後半、フランスはわずか6分の間にMFポール・ポグバとFWキリアン・エムバペが2点を挙げ(後半14分と20分)、ゲームを締めくくろうとした。

しかしクロアチアは不屈の精神を見せ、フランスGKウーゴ・ロリスがクリアを焦ったところをマンジュキッチがゴールに流し込み、試合を振り出しに戻すかに見えた。

しかしフランスはそのまま試合を勝利で終えた。デシャン監督は2年前のユーロ敗北の雪辱を果たし、熱狂的な大歓声のなか、主将のロリスがワールドカップ・トロフィーを掲げるに至った。

資質と運――決定的な組み合わせ

フランスは何にでも対応できるチームだった。万能型の資質を持ち、それがW杯の勝利を引き寄せた。

その資質に幸運が加われば、歯が立たない組み合わせになり得る。

マンジュキッチのオウンゴールを呼び込んだフリーキックのきっかけとなった、グリーズマンの芝居のような倒れ方に、クロアチアは文句を言い続けるだろう。ハーフタイム直前にVARが決定的な介入したことについても、クロアチアにしてみれば、ペリシッチのハンドはそこまではっきりしたものではなかった。

ただし、このフランス代表は実に優れたチームだった。そこは疑いようもない。強固な中盤を原動力にした強力な攻撃と、見事な守備を兼ね備えていた。

クロアチアは後半早々にも1度、追いつくチャンスを作ったが、ポグバとエムバペはペナルティエリアの端から、動けないクロアチアGKダニエル・スバシッチを攻略して得点し、決勝の道筋を定めた。スバシッチは準々決勝のロシア戦でハムストリング(ふともも裏の筋肉)を負傷し、体調が十分に回復していないようだった。

試合終了の笛が鳴り、サッカー最高のトロフィーを再び獲得すると、フランスは大喜びで勝利を祝った。保守的な方法論で批判されがちだったデシャン監督は、選手たちにより空高く胴上げされた。

クロアチアの誇りと情熱

クロアチアはW杯決勝の敗者として母国に戻る。しかし、この試合に対するクロアチアの姿勢は、中立の立場だったファンの心もつかんだ。試合終了の笛が鳴ると、ファンは長いスタンディング・オベーションを送った。

ズラトコ・ダリッチ監督が率いたクロアチアは、リードを許しながらも最初の1時間はフランスよりも良いチームで、ポグバとエムバペによる2発の手痛い攻撃を受けると、フランスを押し返した。

クロアチアは今大会の決勝にたどり着くまでに厳しい道のりを歩んできた。ベスト16と準決勝では、それぞれデンマークと大会開催国ロシアをPK戦で破った。準決勝でイングランドに勝つには、延長戦が必要だった。

それでもクロアチアは疲労の色を見せず、試合開始からフランスを激しく攻め立てた。試合が終了に近づいても1度も頭を抱えることなく、マンジュキッチがロリスのミスを見逃さず得点し、有り得なさそうだった同点の恐れまで抱かせた。

追いつくことはならなかったが、世界クラスのMFルカ・モドリッチは今大会を明るく彩り、ペリシッチのエネルギー、献身、脅威も目立った。

クロアチアの選手たちと監督は、国家の英雄として帰国する。華やかな今大会への貢献、決勝戦への総力を挙げた取り組みからすれば、その地位は全くふさわしいものだ。

VARをめぐる大議論

今大会ではVARが初めて使われた。それだけに、決勝戦でもVARが存在感を示したのは、もしかするとやむをえなかったのかもしれない。

ハーフタイム直前のことだった。コーナーキックがニアポストにいたペリシッチの手に当たると、フランスの選手たちはすぐにPKをアピールした。

ピタナ主審は長時間、VARを確認していた。いったん納得して振り向くかと思ったら、まだ今一度、向き直って観直したほどだ。ついにPKスポットを指差した判定に、クロアチアは愕然とし、フランスは大喜びした。

クロアチアはこのファウルが「はっきりと疑いない」ミスではなく、ハンドはペリシッチの故意ではないと主張するだろう。しかし、決定的なグリーズマンのPKが決まると、痛みは広がっていった。

マン・オブ・ザ・マッチ――アントワーヌ・グリーズマン(フランス)

1998年以来初めて、プレミアリーグ所属選手がW杯決勝戦で得点――統計から

  • デシャンはブラジルのマリオ・ザガロ氏、ドイツのフランツ・ベッケンバウアー氏に続き、選手と監督の両方でW杯優勝を果たした3人目の人物になった
  • フランスは1970年メキシコW杯以来となる決勝で4得点したチームとなった。この年の決勝では、ブラジルがイタリアに4-1で勝利した
  • クロアチアは1974年西ドイツW杯でのオランダ以来の、初出場したW杯決勝で敗北したチームとなった。オランダは西ドイツに1-2で敗北した
  • マンジュキッチはW杯決勝で初めてオウンゴールを決めた選手となった
  • エムバペは史上2番目に若いW杯決勝の得点者だ(19歳207日)。1958年スウェーデンW杯で得点したブラジル代表のペレが最年少得点記録を保持している(17歳249日)
  • グリーズマンはフランス代表として、主要国際大会で10点を挙げている。レ・ブルー(サッカーフランス代表の愛称)でグリーズマンより多く主要国際大会で得点している選手は3人しかいない(14得点のミシェル・プラティニ、13得点のジュスト・フォンテーヌ、12得点のティエリ・アンリ)
  • ペリシッチは主要国際大会で11得点に関与している(7ゴール4アシスト)。これはクロアチア選手として最高の数字だ
  • ペリシッチはW杯決勝で得点とPKにつながる反則の両方を生んだ2番目の選手だ。2006年ドイツW杯決勝でイタリアのマルコ・マテラッツィが史上初めて得点とPKにつながる反則の両方を行った
  • ポグバはマンチェスター・ユナイテッド所属選手として初めて、W杯決勝で得点した。英プレミアリーグ所属者としても、1998年フランスW杯のエマニュエル・プティ以来となる得点だった
  • ポグバがフランスにもたらした得点は、1982年スペインW杯決勝戦イタリア対西ドイツでのマルコ・タルデッリ以来となる、ペナルティエリア外からのゴールだった
  • マンジュキッチは、同一試合で得点とオウンゴールの両方を挙げたW杯史上2番目の選手だ。1978年アルゼンチンW杯で、オランダのアーニー・ブランツがイタリア戦で同じように得点とオウンゴールの両方を挙げた
  • マンジュキッチは、W杯決勝とサッカー欧州ヨーロピアン・カップおよびチャンピオンズ・リーグ決勝の両方で得点した5番目の選手になった。過去にはフェレンツ・プスカシュ(ハンガリー)、ゾルタン・チボール(ハンガリー)、ゲルト・ミュラー(西ドイツ)、そしてジネディーヌ・ジダン(フランス)が同様の記録を残している

(英語記事 World Cup 2018: France beat Croatia 4-2 in World Cup final