2018年07月17日 10:26 公開

ドナルド・トランプ米大統領は16日、フィンランド・ヘルシンキでロシアのウラジーミル・プーチン大統領と会談し、2016年米大統領選にロシア政府が介入したという疑惑について、ロシアを擁護した。

米連邦捜査局(FBI)をはじめとする複数の米情報機関は、2016年大統領選にロシアが介入したと断定している。司法省は13日に民主党本部のサーバーや民主党幹部、ヒラリー・クリントン氏のスタッフのメールアカウントをハッキングした罪で、ロシアの諜報担当12人を正式起訴したばかり。この展開を受けて米国内では、米ロ首脳会談の中止を求める声が上がっていた。

これに対して、ヘルシンキでプーチン氏と通訳だけを挟んで1対1で2時間近く会談したトランプ氏は、共同記者会見で、ロシアが大統領選に介入する理由がなかったと言明した。大統領選介入について、自分の国の情報機関を信じるのか、ロシア大統領を信じるのかと質問されると、「プーチン大統領はロシアじゃないと言っている。ロシアである理由が見当たらない」と答えた。

プーチン氏も、米国の内政問題に介入したことはないと、従来の主張を繰り返した

トランプ氏はさらに、ロシア疑惑の捜査は米国にとって「とんでもないひどいことだ」述べ、ロシアの介入に自分の選挙陣営が結託したとの疑惑についても、「結託などなかった」と従来の主張を繰り返した。

トランプ氏個人について、本人を脅す材料になる情報(コンプロマート)を得ているのかとの質問を受けたプーチン大統領は、これを一笑に付した。さらに、「トランプ氏がモスクワを訪れた際に、本人に不都合な情報を我々が集めたといううわさは耳にした」と認めつつ、当時はトランプ氏は民間人の実業家で「モスクワにいることなど知らなかった。彼がモスクワにいることを誰も私に知らせなかった」と答えた。さらに、大勢の米国の実業家がモスクワを訪れるなか、全員の個人情報を集めることなどしないと笑い、「この件についてこれ以上、取り合うのを止めましょう」と述べた。

プーチン氏は、司法省に起訴されたロシア当局者について、米捜査員の入国と取り調べを認めると提案。その代わりにロシア捜査当局も同様に、米国内の容疑者への捜査権を求めると述べた。

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米ロ関係全般については、プーチン氏はヘルシンキ会談が「率直で役に立つ」ものだったと評価。トランプ氏は、「非常に生産的な対話」だったと歓迎した。

トランプ氏は、自分たちが会って話すまで米ロ関係は「これほど最悪だったことはない」ものの、それは今回の首脳会談ですっかり変わったとも述べた。

西側諸国とロシアの関係は、2014年のクリミア併合を機に厳しく悪化した。プーチン大統領は記者会見でこれに言及し、「クリミアに関するトランプ大統領の立場は周知の通りだ。クリミアのロシア復帰は違法だと大統領は言うが、我々の見方は異なる(中略)国際法に則り住民投票が行われたと認識している。我々にとっては、済んだ問題だ」とロシアの立場をあらためて強調した。

シリア内戦については、両大統領とも危機解消のため協力していくと合意した。開始から8年になる内戦で、米ロは対立する側をそれぞれ支援している。

明るい話題では、トランプ氏はサッカーのワールドカップ・ロシア大会の成功をたたえ、プーチン氏に祝意を伝えた。プーチン氏はこれに応えて、トランプ氏に大会の公式ボールを贈呈。トランプ氏は、12歳の息子バロン君にあげることにすると喜んだ。

米国は2026年大会を、カナダとメキシコと共に共催する。

米政界の反応は

与党・共和党幹部のポール・ライアン下院議長は強い表現の声明で、トランプ氏は「ロシアは同盟国ではないのだと受け入れなくてはならない」と批判した。

「ロシアは我々の最も基本的な価値観や理想に敵対を続けている。米国とロシアは決して、道徳的に同等ではない」と議長は指摘し、さらに2016年大統領選にロシア政府が介入したことは「疑いの余地がない」と断言した。

共和党重鎮のジョン・マケイン上院議員(アリゾナ州選出)は声明で、米国大統領による「恥ずべき振る舞いだ」と非難。「独裁者の前でこれほどみっともない真似をして、自分を貶めた大統領は今までいなかった」と述べた。

上院軍事委員会に属する共和党重鎮のリンジー・グレアム上院議員は、「2016年の介入についてロシアの責任をきっぱり問いただせたのに、機会を逃した」と批判した。

民主党のチャック・シューマー上院院内総務は、「合衆国大統領が米国の捜査機関や国防担当、米国の情報機関に背を向けてプーチン大統領の側に立った。無思慮で危険で弱腰の行動だ。大統領はこの国よりも自分自身を大事にしている」とツイート。さらに、連続ツイートで、大統領の行動は「この国の敵に力を与えつつ、この国や同盟諸国の防衛を損なった」と批判した。

https://twitter.com/SenSchumer/status/1018902314667642886

ダン・コーツ米国家情報長官も声明で、各情報機関はロシアが「継続的かつ広範囲にわたり」米国の民主主義を傷つけようとしていると確信していると言明した。

これに対してトランプ氏はツイートで、「自分の情報関係者を大いに信頼している」と書き、さらに「一方で、より明るい未来を築くためには、過去にばかり注目しているわけにはいかないことも私は認識している。世界の2大核保有国として、我々はうまくやっていかなくてはならない」と表明した。

マイク・ペンス副大統領は商務省での演説で、首脳会談の意義を擁護。「両国の意見の違いをじっくり話し合った。しかし、世界と米国民は、ドナルド・トランプ大統領は常に米国の繁栄を安全を最優先するという姿を目にした」とトランプ大統領を称えた。

https://twitter.com/ABCPolitics/status/1018932840061394944


<解説> トランプ氏、本国の敵を標的に――ジョナサン・マーカスBBC外交編集委員

首脳会談が始まる前から、プーチン氏は得点していた。そもそもトランプ大統領が自分と会いたがっているという、ただそれだけで。

プーチン氏は、ロシアは米国と対等な存在だと世界に知らしめることを目的に、国際舞台のベテランとしての存在感を示した。ロシアは核保有超大国で、エネルギー供給国で、中東において不可欠な重要な存在なのだと。

それに対してトランプ氏の目的は何よりも、米国内の自分の政敵を罵倒することのように見えた。

報道陣の質問の多くは、米大統領選へのロシアの介入(米国の主要情報機関は証拠を詳しく検討した結果、この結論に至っている)に集中した。とりわけ、ロシア疑惑を捜査するロバート・ムラー特別検察官が、ロシアの諜報担当12人を正式起訴したことが、繰り返し取り上げられた。

しかし、トランプ氏はまったく取り合わなかった。自分の政府の情報機関が提示する証拠よりも、プーチン氏に「大丈夫だ」と言われる方が、明らかにうれしそうだった。しかも、ロシアも捜査に参加して起訴された当事者をロシアとして取り調べてはどうかとプーチン氏が提案すると、よりによってトランプ氏はこれを歓迎したのだ! 

北大西洋条約機構(NATO)の同盟諸国と、米連邦議会のベテランたちは、この光景をあぜんとして眺めていたに違いない。

(英語記事 Trump sides with Russia against FBI at Helsinki summit