第3に、金委員長に非核化の実行を促す目的で作成された4分間のプロモーションビデオです。非核化を受け入れた場合、北朝鮮がどのような経済繁栄をするのかを連想させる内容のビデオです。

 ビデオの中で、非核化によってもたらされる経済的メリットを強調しています。電気インフラ、鉄道の整備、技術革新、医療の発達、リゾート地の開発などを挙げ、経済発展を成し遂げた北朝鮮の姿を魅力的に描いています。それらをインセンティブ(刺激・誘因)にして、非核化を実現させようという米国の意図が透けてみえます。

 ビデオは「たった一つの瞬間」「一回の選択」と訴えて、機会損失をしないように金委員長に警告を発しています。5月24日の会談中止を告げた例の書簡においても、トランプ大統領は金氏に「あなたはチャンスを逸した」という一文で締めくくりました。ビデオの中で、金氏が大好きなバスケットボールの選手がダンクシュートを決める場面があります。同氏に対して、即座に大胆な決断を下すように強く働きかけているわけです。

 第4に、タッチングと発言量です。握手と同様、タッチングは非言語コミュニケーションの中の動作に分類されます。一般に、目上の人が目下にタッチングを行います。

 トランプ大統領は握手とタッチングを組み合わせて、自分が会談をコントロールしているという演出をしました。共同声明に著名を行った金委員長がトランプ大統領の背中に手を添えると、今度はトランプ氏が透かさずやり返す姿は、まるでタッチングの競争のようでした。さらに、発言量においてもトランプ氏が金氏を圧倒し、会談の主導権を握っている印象を与えたのです。
共同声明の署名を終え、トランプ米大統領(右)の背中に手をやる北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長=2018年6月12日、シンガポール(ロイター)
共同声明の署名を終え、トランプ米大統領(右)の背中に手をやる北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長=2018年6月12日、シンガポール(ロイター)
 第5に、米朝共同声明の署名後に12本の国旗の前で交わしたトランプ大統領の強引な握手です。トランプ氏は、金委員長の体が動くほど、強く同委員長の手を引っ張ったのです。会談の最後にトランプ流の握手を見せて、「強いリーダー」を世界に見せつけました。

 トランプ大統領は、米朝共同声明で支持者を強く意識した声明を入れました。

 「米国と北朝鮮はすでに身元が特定されている遺骨の本国への即時送還を含め、捕虜及び行方不明兵士の遺骨の回収を約束する」

 トランプ氏はこの声明を発表できたことにより支持基盤の一角を成す退役軍人から高い評価を受けることは間違いありません。