洛雲海(日本基督教団韓国派遣宣教師)

 1945年に太平洋戦争が終わり、朝鮮半島が北と南に分かれ、大韓民国という国家が新しく生まれました。国家をつくる上で要になるのは、憲法です。1948年、韓国の憲法を定める最初の会議(制憲国会開会会議)が開かれましたが、そこで驚くべきことが起こります。

 国会開会を宣言する議長が発した第一声が、なんと神への感謝の祈りを議場に促す言葉だったのです。それは「大韓民国独立民主国第一次会議をここに開催するに至りましたことを、私たちは神に感謝しなければなりません」というものでした。

 日本では考えられないでしょうが、韓国という国はそのようにして始まったのです。その時の議長がだれかといえば、のちに初代大統領になった李承晩(イ・スンマン)でした。これは速記録にもきちんと残っています。このエピソード一つ踏まえるだけでも、韓国の政治とキリスト教がいかに密接に関係しているかがわかると思います。

 キリスト教といってもいろいろな教派や立場があります。保守系キリスト教、進歩系キリスト教、つまり、キリスト教にも右派、左派があるんですね。

 キリスト教右派、左派というのは、カトリックかプロテスタントかで分かれているのではありません。カトリックもプロテスタントも、大部分は保守でしょう。ただ、一部に進歩的な人たち、北朝鮮とも仲良くしていこうという人たちがいて、その人たちを左派と呼ぶわけです。そしてその代表がカトリックや「聖公会」の一部、また「長老教会」や「メソジスト教会」などのプロテスタントの一部の人たちです。

 そして政治的保守層のキリスト者たちは保守系キリスト教と結びつく傾向があり、政治的進歩層のキリスト者たちは進歩系キリスト教と結びつく傾向があります。歴代大統領の宗教をみれば、それは明らかです。
セムナン教会でインタビューに応える洛雲海(ナク・ウンヘ)牧師=2018年4月5日、韓国・ソウル(中田真弥撮影)
セムナン教会でインタビューに応える洛雲海(ナク・ウンヘ)牧師=2018年4月5日、韓国・ソウル(中田真弥撮影)
 例えば李明博(イ・ミョンバク)大統領はプロテスタント「長老教会」の長老でした。彼は長老教会の中でも「統合」と呼ばれる中道派に属し、保守から進歩までを含む一番幅が広い教派です。

 その後の朴槿恵(パク・クネ)大統領は非常に保守的な政治家でした。父親の朴正煕(パク・チョンヒ)を支持していたキリスト者たちは主として保守的キリスト者たちでしたから、同じような人々が支持していたとみてよいでしょう。

 そして進歩派で知られる現在の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、カトリック信徒です。ご存じの通り、廬武鉉(ノ・ムヒョン)と文在寅は親密な同志ですが、彼らを支えているのは同じキリスト教グループです。