川上祐司(帝京大経済学部准教授)

 大阪在住の16歳の野球少年が米メジャーリーグ(MLB)のカンザスシティー・ロイヤルズとマイナー契約を結んだ。彼は中学時代にはシニアリーグ日本代表にも選出された逸材である。

 当然のことながら、在阪を含め、多くの野球強豪校からの誘いがあったことは容易に想像がつく。だが、彼が選んだのは高校球児のあこがれの「聖地」甲子園ではなく、メジャーリーガーだったのである。まずはこの夏のアリゾナ州フェニックスで行われるルーキーリーグでのマウンドに期待したい。

 そのフェニックスでは、MLBの15チームが集うスプリングトレーニングキャンプ(カクタスリーグ)が開催されることで注目を集める。筆者は3年前から、隣のスコッツデール市に「ベースボールファシリティー」と呼ばれる施設があるサンフランシスコ・ジャイアンツに帯同している。

 約1万2千人収容のスタジアムは選手との距離も近く、至る所でファンサービスを行う選手を目にする。チームはマーケティング戦略の一翼を担うさまざまなイベントが行われ、多くのツアー客でにぎわいを見せるなど地元経済にも大きな影響を及ぼしている。

 だが、この施設も8月になると、マイナーの1Aリーグ所属のルーキーたちの「聖地」と化す。スタンドも、うって変わってチーム関係者と選手の家族しかいない。もちろん試合中心のスケジュールは全てナイトゲームで行われる。

 8月のフェニックスの最高気温は40度を超える。乾燥した気候であり、日本のような大汗を流すようなことはないとはいえ、知らぬ間に体内の水分が失われていく。
米アリゾナ州フェニックスの街並み
米アリゾナ州フェニックスの街並み
 このような環境では、どの訪問先でもまずは必ず水を差し伸べてくれる。ここで遠慮しては、脱水症状を確実に起こしてしまう。だから、昼間の市内にある数多くのスポーツファシリティーでスポーツが行われている風景は見たことがない。まさに「自殺行為」だと全ての住民が理解しているからである。

 現在、日本人メジャーリーガーとして活躍する平野佳寿投手が所属するアリゾナ・ダイヤモンドバックスはフェニックスに本拠地を置く。ホーム球場のチェース・フィールドは開閉式の屋根付きで、天然芝のボールパークである。