雨がほとんど降らないフェニックスで、このような構造にしたのはもちろん「暑さ対策」のためである。また、外野スタンドにあるプールは有名だが、今季からはペット同伴席も拡充され、外の気候とは裏腹に犬も一緒に快適なベースボール観戦を楽しむことができる。

 一方、日本でも連日35度以上の猛暑日が続いている。気象庁は会見で「暑さは一つの災害と認識している」と公言し、熱中症などに十分な対策を呼びかけている。

 しかし、愛知県豊田市では校外学習に出掛けた小1男児が熱射病で死亡したという。同市の公立小中学校のエアコン設置率は0・5%だったという。また、この夏も40度を記録した岐阜県多治見市内の公立小の冷房設備の設置率に至っては0%である。犬も快適に過ごせるボールパークがあるというのに痛ましくてならない。

 そんな中で連日行われているのが、「夏の風物詩」である全国高校野球選手権大会である。各地で繰り広げられる地区予選は日々盛り上がりを見せているが、気象庁の呼びかけもむなしく、痛ましい被害が各地で報告されている。熊本では観戦していた観客ら30人以上が、福井では球審を務めていた男性が熱中症にかかった。もはや選手だけの話ではないのである。

 今年の夏の甲子園は8月5日から、準々決勝翌日に設定された休養日1日を含む17日間(雨天順延除く)で開催される。大会を主催する朝日新聞社と日本高野連は、今年で100回目を迎える本大会を記念大会と位置付け、さまざまなイベントを行っている。

 朝日新聞社は、夏本番を前に「スポーツと熱中症」と題したシンポジウムを5月に開催した。シンポジウムでは、日本高野連の八田英二会長が「甲子園では今年から延長13回以降はタイブレーク制を導入した。熱中症が起こらない高校野球を目指していきたい」と述べているが、ファン視点の無さが米国との違いを感じざるを得ない。シンポジウムの記事下にあるポカリスエットの広告も、もどかしく感じてしまうのは筆者だけであろうか。

 そもそも夏の甲子園は、1915(大正4)年に「全国中等学校優勝野球大会」として、大阪朝日新聞社の主催で始まった。当初は豊中球場で開催されていたが、観衆増加によって手狭になったため、第3回大会から阪神電鉄が所有する鳴尾総合運動場野球場へ移行する。
阪神甲子園球場の外観=2014年8月(志儀駒貴撮影)
阪神甲子園球場の外観=2014年8月(志儀駒貴撮影)
 これにより阪神電鉄は全国的規模の野球大会の球場を提供する機会を獲得し、その後も阪神甲子園球場の建設とともに、プロ球団経営にも参画することになる。そして、甲子園球場の完成とともに新たに鉄道が敷設されるなど、同社のマーケティング戦略の一翼を担うことになる。現在も、大会期間中の電車利用者もさることながら、NHKによる期間中の全国完全生放送が球場内広告のセールスに大きく寄与しているという。