2018年07月27日 12:47 公開

パキスタンで25日に実施された総選挙で、野党・パキスタン正義運動(PTI)を率いるイムラン・カーン氏が26日、勝利宣言を行った。一方で、対立候補らは不正投票があったと非難している。カーン氏はクリケット界の大スター選手だった。ワールドカップに優勝したパキスタン代表チームの主将も務めた。

カーン氏は26日、首都イスラマバード郊外にある自宅からテレビ演説し、「我々は成功し、国民に信任された」と述べた。

それでも、カーン氏が率いるPTIは過半数議席には達しない見通しで、政権樹立には連立パートナーを模索しなければならない。

今回の選挙は、暴力事件が相次いだ。選挙当日の25日には投票所で爆発があり、31人が死亡した。

富裕階級出身でカリスマ性あふれるカーン氏は、パキスタンが優勝した1992年のクリケット・ワールドカップで代表主将だった。かつてはプレイボーイな有名人として知られていたが、そのイメージはかなり前に払拭した。最近では、パキスタン軍の介入によって選挙戦で有利になったと批判されている。パキスタンは核を保有している。

選挙結果の公式な承認はまだされていない。

不祥事で辞任したナワズ・シャリフ元首相率いる与党のパキスタン・イスラム教徒連盟シャリフ派(PML-N)は、伝えられている選挙結果の受け入れを拒否している。他の多くの小規模政党も全て同様に、不正投票があり結果が操作されたとしている。

今回の選挙は、カーン氏の野党PTIとシャリフ氏の与党PML-Nの争いと見られていた。暗殺されたベナジル・ブット元首相がかつて率いた歴史的なリベラル政党、パキスタン人民党(PPP)が第3党になると広く予想されていた。

カーン氏は演説で、「今回の選挙はパキスタン史上最も明確で、公平な選挙だったと思う」と述べ、そうでないとする主張は全て調査すると付け加えた。

同氏はまた、パキスタンを発展させるために手を取り合おうと対立候補に訴えた。さらに、核保有国同士の重要な火種となっているカシミール地方をめぐる紛争の解決を模索するため、 インドと協議すると明言した。

米国との「互恵的な」関係もカーン氏は求めた。パキスタンは、カシミール地方で米国が実施しているドローン攻撃などの反テロ対策について厳しく批判している。

選挙結果の最新数字は

パキスタン選挙管理委員会が発表した統計では、今回の総選挙で争われている国会の272議席のうち、カーン氏率いるPTIが105議席を獲得している。

これに先駆けてパキスタン紙ドーンが発表した非公式な予測では、PTIは120議席を獲得する見通し。

過半数を獲得するには合計で137議席が必要。

パキスタンでは、文民政権が任期満了で次政権に権力を移譲する選挙は、今回が2度目。

AFP通信によると、投票率は登録有権者1億600万人のうち50%から55%になると予測されている。

ドーン紙と人権団体「パキスタン人権委員会(HRCP)」は26日、投票過程への疑問を提起した。「多くの地域で女性が投票を認められなかったとの訴えをHRCPが受理した」とドーン紙は報じた。

他の主要な候補者は

前回の総選挙に勝利したシェリフ氏は、2016年の「パナマ文書」流出をきっかけとする汚職スキャンダルで有罪となり、禁錮刑で服役中だが、今回の選挙でも議席数を大きく維持した。

シェリフ氏は弟のシャバズ・シェリフ氏をPML-Nの党首に任命し、不在時の党運営を任せた。

ベナジル・ブット元首相の息子で現在29歳のビラワル・ブット・ザルダリ氏は、英オックスフォード大学在学時からPPP党首となり、同党を率いている。

イムラン・カーン氏とは

カーン氏は1996年に政界入りしたものの、何年も政治的には傍流で闘ってきた。現在は信心深く、大衆迎合的な反貧困の改革論者として、自分を位置づけている。

「22年前に始めた私の思想を実現するため、それが可能な地位に就く機会を、神が与えてくれた」とカーン氏は演説で述べた。

カーン氏はまた、首相が通常住む大きな公邸には住まないと語った。「納税者の金を使ってこれまでに支配層のエリートがやってきたことは、何であろうと全て変更する。私は今日、そのように約束する」。

65歳のカーン氏は、反汚職のメッセージを掲げて選挙活動をしてきた。パキスタンで確立されてきた政治帝国に挑戦するとも宣言した。

しかし、カーン氏が首相になる場合、同氏のイスラム過激派勢力に対する考え方が詳しく調べられることになる。カーン氏はイスラム過激派タリバンによる暴力のいくつかを批判しているが、PTIが運営するカイバル・パクトゥンクワ州政府は昨年、「タリバンの父」として知られる人物が校長を務める、悪名高いマドラサ(イスラム神学校)「ハッカニア」に対し、300万ドル(約3億3300万円)を拠出した。

次期首相の主な課題は

選挙前、カーン氏はBBCに対し、もし首相に選出されたらまず重点的に取り組むのは経済だと話した。パキスタンの通貨ルピーの価値は20%近く下落している。インフレが加速し、貿易赤字が拡大している。

織物製品などの輸出は、中国など周辺競合国が作る安価な製品に打撃を受けている。専門家は、新政府が2013年以来2度目となる緊急援助を国際通貨基金(IMF)に求める必要があるかもしれないと指摘する。

カーン氏が政府内で圧倒的権限を確保できれば、緊縮財政を伴う難しい政策も決定しやすくなると、イスラマバードで取材するBBCのセクンデル・ケルマニ記者は言う。

しかし、もし対立する各党が選挙結果の受け入れを拒否し続け、カーン氏も野党時代に行ったような街頭デモを実施すれば、パキスタンは政情不安に直面する可能性がある。

なぜ今回の選挙が大事なのか

パキスタンは2億人近い人口を擁し、核保有国インドに敵対し、自国も核を保有する。経済面では重要な発展途上国で、イスラム教が多数派を占める世界最大の国の1つでもある。

同国71年の歴史の中でたびたび軍が政権を握っており、今回の選挙はパキスタンで2度目の連続する民主的権限委譲と考えられていることから、意義深いものとなっている。

選挙に不正はなかったのか

投票の準備期間と投票数自体の両方が、大きな議論の的となっている。

投票前、PML-Nは同党を標的にした治安当局による取り締まりがあったと訴えた。PTIを支持する裁判所もそれを支援したと主張している。パキスタン軍は政治的介入を否定した。

一方で独立系メディアは、自分たちを沈黙させようとするあからさまな策略があったとしている。人権団体HRCPも、開票結果の合法性が疑われる「十分な根拠」があると述べた

投票が25日に締め切られた後、複数の政治団体が、投票所で不正投票があったと主張した。その内のいくつかは選挙当局が否定した。

複数の党の議員は、投票集計中に党の派遣した監視員が投票所から追い出されたと述べた。監視員は認証を得た投票結果の写しも得られなかったという。これは選挙手続きに違反している。

専門家は、数十の選挙区で非公式な結果発表が通常ないほど遅延したとも強調する。PML-Nが拠点としてきたパンジャブ州は重要選挙区だが、ここでは特に発表が遅れた。

選挙当局は、結果の発表が遅れたのは電子集計システムの故障という単純な理由だとしている。システムが機能しなかった分の投票は現在、手作業で集計されている。

(英語記事 Pakistan election: Imran Khan claims victory amid rigging claims