田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 文部科学省の腐敗が次々に明らかになっている。その先駆けになったのが、昨年1月に政府の調査で詳細が明らかになり、関係者の処分が行われた、いわゆる「天下り斡旋(あっせん)」を巡る文科省の組織ぐるみの違法行為である。

 官僚の再就職については、国家公務員法によって厳しい取り締まり規定が存在している。だが、文科省は人事局を中心に、OB組織とも連携しながら、法律に違反する形の再就職の斡旋を繰り返していたのである。

 しかも、文科省当局は「斡旋の事実はない」などと、虚偽の説明を政府に伝え、悪質な欺瞞(ぎまん)行為を繰り返した。組織ぐるみの違法行為であり、文科省の事務方トップである前川喜平事務次官(当時)の責任は特に重大であった。

 この「天下り斡旋」についての調査報告書を見ても、前川氏らがこの「天下り斡旋」の組織ぐるみの構造に深く関与していたことがわかる。また、具体的な斡旋事例についても、前川氏は「天下り斡旋」の調整を担っていたのである。

 天下りは、監督官庁であるという権益を背景に、官僚の私的な利害の追求だけを目的として、民間の組織や大学に対して再就職などを行うことを意味している。監督する側と監督される側が懇ろになり、その関係性から腐敗や特別な便宜の供与などが発生すれば、当然国民の利益を損ねるだろう。

2018年7月、「政と官の在り方」をテーマに
講演する文科省前事務次官の前川喜平氏
 例えば、私立大学に文科省の官僚たちが教員の地位で天下りしたとしよう。天下りした多くの教員は専門的な知識に乏しいにもかかわらず、高給取りとして優遇されて雇用されることになる。

 この状況は、専門的な研究に努力を続ける有能な若い研究者たちの就職の道を閉ざしてしまう。つまり、日本の研究者の国内研究機関への就職が困難になり、そのことが日本の研究を停滞させる一因になっているのである。

 そして、単に文科省の役人でしかない、空っぽに近い「ブランド」のために、高い給料を払っている。このことは、そのまま学生や保護者の授業料の過剰な負担になり、まともな教育が行われない背景にもつながる。まさに教育を食い物にしていたのが、文科省の実態だったといえる。