足立康史(衆院議員)

 7月26日、27日の朝日新聞朝刊に、「自民党総裁選2018 安倍政権の実像」と題する連載記事が掲載され、その歪んだ見方と酷い印象操作に唖然とした。

 まず、連載「上」の見出しは「世論意識、期待振りまく政権」だった。分かりやすく要約すれば「経済と外交で期待を振りまき、選挙での勝利を最大限、政治的パワーとして生かす。この政治手法は、離合集散を繰り返した野党の自滅と非力さも手伝い、不祥事や政権へのダメージを覆い隠した。5年半は、その繰り返し」と断じている。

 また、連載「下」は、「政府も党も、進む『私的機関』化」との見出しで、「政府職員や自民党関係者が『安倍の私的機関』のスタッフかのように動くことは、一般社会にも影響を及ぼしつつある」と、安倍政権を諸悪の根源かのように批判する。

 では、安倍政権は、本当に経済と外交で期待を振りまいただけなのだろうか。そんなことはない。まず、経済について、安倍政権は2012年に政権を奪還するや、経済を最重要課題に掲げ、景気と株価のエンジンを目いっぱい吹かしてきた。

 それを象徴するのが日銀総裁人事であり、自分の考えに近い国際派の黒田東彦総裁を起用し、2018年2月には54年ぶりとなる再任を決定した。そして、名目国内総生産(GDP)は550兆円の大台を超え、5年前の493兆円から57兆円も拡大させた。

 外交についても、安倍政権の成果は、米国の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)離脱後の TPPイレブン妥結など数多く挙げられるが、特に重要なのが、同盟国である米国のトランプ大統領との関係をしっかり築いたことだ。

 トランプ氏が大統領に就任する直前の2016年11月、安倍総理はトランプ氏が住むトランプタワーに駆けつけ、懐に飛び込んだ。お互いを「シンゾウ」「ドナルド」と呼び合い、中露や北朝鮮と対峙する中でトランプ大統領は安倍総理の助言を頼り、電話会談は20回を超えるという。こうしたトップ同士の人間関係を甘く見てはならない。

 もちろん、北朝鮮の拉致、核、ミサイルの問題でも決して利害が一致しているわけではないし、通商問題では多国間を重視する日本と二国間にこだわる米国との摩擦は避けられない。しかし、トップ同士の関係がよければ交渉も容易になるし、何よりも入ってくる情報の量と質が変わる。これは誰も否定できない安倍政権の成果である。
日米首脳会談で握手する安倍晋三首相とトランプ米大統領=2018年6月、ワシントンのホワイトハウス
日米首脳会談で握手する安倍晋三首相とトランプ米大統領=2018年6月、ワシントンのホワイトハウス
 経済と外交だけではない。経済について、安倍政権の経済重視を象徴するのが日銀人事だと書いたが、憲法も同じである。安倍政権は5年前の2013年8月、フランスから呼び戻した小松一郎大使を内閣法制局長官に充て、憲法解釈の変更を断行した。

 安保法制懇(安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会)の報告書とりまとめに命を捧げた小松長官の「人生をかけた仕事ぶり」(安倍総理)が時代を画するものとなったことは言うまでもない。

 憲法改正については、国内の右派からも左派からも極端な意見が寄せられている。だが、そうした中で、2017年5月の公開憲法フォーラムに安倍総理が寄せたビデオメッセージで打ち出した「自衛隊の明記」提案は、卓越したリーダーシップによるものであり、遅々として進まない憲法改正議論に大きな一石を投じることになった。憲法改正の発議と国民投票までには引き続き紆余曲折があるだろうが、安倍政権の間に実現することを確信している。

 以上のように、経済と外交そして憲法に係る安倍政権の取り組みを一瞥(いちべつ)しただけでも、「期待振りまく政権」との朝日新聞の見出しが全く事実に即していないことは明らかである。