第五は、敵がいないことである。これまで述べてきたように、内閣法制局や財務省主計局、創価学会を怒らせなければ、麻生派や二階派、公明党が応援してくれる。自民党内反主流派がこれを崩すのは容易ではないだろう。

 野党に至っては、語るに値しない。海江田万里、岡田克也、蓮舫、枝野幸男…。安倍内閣を「支える」人材が豊富である。彼らが野党第一党の党首を続けてくれる限り、安倍自民党内閣は安泰であろう。

 たとえ中途半端でも、景気は回復している。何かの一つ覚えのように「モリカケ」を繰り返すだけの野党に、国民は政権を渡す気はないだろう。安倍自民党に不満が充満しても渡す気にはなれないだろう。「いくらモリカケを騒いでも、野党がザルだから大丈夫」…くらいのことは誰でも言えるが、ではなぜ安倍自民党に対抗できる野党が存在しないのか。

 仮に去年の衆院選の際、人気絶頂だった小池百合子氏が「首相を3日やれば死んでもよい」と決心して、後先考えずに全野党を結集していたら安倍内閣は即死だっただろう。だが、できなかった。それを小池氏個人の力量に帰すのは簡単だが、組織の裏付けがないと野党結集など不可能だ。

 では、創価学会に対抗できる組織とは何か。労働組合の連合である。現在の連合の首脳は、神津里季生会長と逢見直人会長代行(前事務局長)は、旧民社系で保守色が強い。この2人が「別に安倍内閣が続いてもらってよい」と考えているのではないか。そう考えないと説明がつかないことが多いのだ。

 枝野幸男立憲民主党代表にしろ、玉木雄一郎国民民主党代表にしろ、安倍内閣以上の政権運営ができるのか。小池氏にしても然り。すなわち、彼らが政権を獲るよりも、安倍政権に存続してもらった方がアベノミクスで労働者の賃金は上がり、雇用は改善されるのである。
立憲民主党の枝野幸男代表(酒巻俊介撮影)
立憲民主党の枝野幸男代表(酒巻俊介撮影)
 もちろん、金融緩和を中核とするアベノミクスとて、消費増税の影響で中途半端だ。しかし、安倍首相以上に景気を回復できそうな総理大臣候補はいない。ならば、何が何でも安倍政権を倒すなどという野党結集など、邪魔した方が合理的だ。

 ついでに言うと、連合は組織内に自治労と日教組を抱えている。彼らは景気回復には反対だ。デフレを脱却しなければ民間の賃金は上がらず、公務員の給料は相対的に上がる。神津、逢見の両氏も自治労や日教組を敵に回す度胸はあるまい。安倍首相が、法制局や主計局、創価学会を敵に回す度胸がないように。

 ここに、安倍首相と連合首脳の思惑が一致する。口では保守を唱えながら労働者に優しい総理大臣を引きずり下ろす必要など、どこにあるのか。

 しばしば「マトモな野党が存在しない」との慨嘆が聞かれるが、組織論からの考察がほとんどなされないのは、どういうことか。しょせん議員の数合わせなど、組織の意向で決まるというのに。