要するに、黒田さんがお札を刷っている限り、安倍政権は倒れないのである。黒田さんとは、もちろん黒田東彦日銀総裁のことである。この人物は今年3月と5年前の人事で安倍首相が押し込んだ。日銀の政策は、1人の総裁と、2人の副総裁、6人の委員が決める。安倍首相は政権発足以来、この9人の人事で勝ち続けた。

 旧民主党政権のみならず安倍首相以前の歴代自民党内閣は、お札を刷るのを拒否し続けた。麻生内閣に至ってはリーマンショックで世界中が増刷競争を始めた時に、頑(かたく)なに増刷を拒否し続けた。結果、何の関係もない日本が地獄絵図の惨状に陥った。

 アルバニア並みの経済政策である。アルバニアとは、政府主催のねずみ講で国家崩壊に至った国のことである。その張本人のラミズ・アリア大統領は、後に首相に返り咲いている。

 リーマンショックの責任者である麻生太郎が副総理兼財務大臣として返り咲くなど、ラミズ・アリアを笑えまい。どこの愚か者が、このようなタワケた人事を行ったのかと糾弾したくなるが、自分の国の自分の総理大臣のやらかしたことだから呑み込もう。

 とはいうものの、このような失敗をしつつも、安倍首相は日銀人事で勝ち続けた。そして「勝利の方程式」につながっている。これが、安倍政権が倒れない唯一の積極的な理由である。そして、消費増税の悪影響で緩やかでしかないが、景気は回復してきている。これまで上げてきた理由が重なり、安倍政権が長期化したことで多くの人が救われた。

 大多数の国民は、自民党に憲法改正などと言う夢物語を期待していない。くどいが、安倍自民党改憲案は夢としても、まったく魅力がない。

 最後に。安倍首相は総裁3選を目指すという。戦後、3期やり遂げた総理大臣と言えば、吉田茂と佐藤栄作しかいない。そして2人とも晩節を汚し、心ある側近は「2期でやめておけば」と後悔した。当たり前の話だが、政権が長く続きすぎること自体が悪なのだ。権力には自浄作用が必要であり、長すぎる政権は硬直化して歪が生じる。

 では、安倍首相は3選を目指すにあたり、何を目指すのか。これまでのように政治家ではなく行政官に徹するつもりか。もし、これが「一日でも長く総理大臣を続けたい」だけの愚劣な人間なら巧妙な政争術だ。ただし、その場合は「二度と戦後レジームからの脱却などと生意気なセリフを吐くな!」との批判を甘んじて受ける覚悟だろうが。
約1年半ぶりに開かれた党首討論で安倍晋三首相(右手前)に質問する立憲民主党の枝野幸男代表=2018年5月、国会
約1年半ぶりに開かれた党首討論で安倍晋三首相(右手前)に質問する立憲民主党の枝野幸男代表=2018年5月、国会
 現時点で安倍政権がやろうとしている政策は、消費増税10%くらいなのである。それも別に安倍首相でなければできない話ではない。むしろ景気回復前の増税阻止ならともかく、増税を公約に3選を目指すのか。さらに来年は統一地方選と参議院選挙がある。増税と9条改正を掲げて選挙に勝てると思っているのか。その場合、安倍首相が勝とうが負けようが、日本人は地獄に落ちる。

 安倍政権が安泰なのは、景気回復について、多数の政治に興味がない国民が支持してくれるからであり、本質的には無難な政治しかしていないからである。安倍政権こそ、戦後レジームの護持者として長期政権化しているのである。