「仮に人間がぬいぐるみを背負って走らないといけなくなったとして、ガムテープで固定したほうが走りやすいでしょう。騎手のくるぶしは、そのガムテープの役割なんです」

 馬上で踊るような追い方をしても、動いているのは膝から上だけ。くるぶしは固定したままだ。見た目は派手だが、馬に負担をかけない騎乗。的場ならではの名人芸である。

 生まれたときから、家の風呂場の横に厩があって、馬がいた。若いころから特別な才能に恵まれていたわけではない。そのぶん、人より多く調教に騎乗するなど努力して、腕を磨いた。

「他の騎手から乗り替わったら必死で勝った。逆に、俺から乗り替わった馬には勝たせなかった。そうしてがむしゃらにやっているうちにリーディングになっていたんです」

 今は、大井、浦和、川崎、船橋の南関東4場で毎日のように騎乗しているが、40歳近くまでは、大井以外ではほとんど騎乗しなかった。

「大井でたくさん勝ってお腹一杯だった。もういいや、という感じ(笑い)。あのころから他場でも乗っていたら、今ごろ8000勝していたと思う」

 自分は「大井の的場」だ、という意地とプライドがあった。
赤地に白の星の騎手服がトレードマーク
赤地に白の星の騎手服がトレードマーク
「勝つときの喜びと充足感こそ騎手という職業の最高の魅力」と言う的場が、もっとも勝ちたいと思っているのは、大井で行なわれる東京ダービーだ。しかし、これまで37回出場して未勝利。2着が10回もある。

「しょうがないよ。2着10回、それもいいことだよ」