黒髪ストレートにワンピース姿の彼女。見た目は清楚なお嬢様風だが、その正体は競馬の魅力にとりつかれた勝負師。競馬ライターとして日本全国のみならず海外の競馬場まで飛びまわる。そんな日常を競馬の勝敗結果とともに綴ったのが本著『私は競馬を我慢できない! 馬酔い放浪記』(競馬ベスト新書)だ。著者の井上オークスさん(35才)はこう語る。

「もちろん勝てばお金が入ってくるというのもありますが、何といっても現場の臨場感が好きなんです。競走馬や騎手に向かって、“いけー!”とか“させー!”とか大声を出す。日常生活で大きな声を出すことってそんなにないから、競馬場で声を張り上げて応援するってかなりのストレス解消になるんです」(井上さん・以下「」内同)

 著者が競馬界の門を叩いたのは大学卒業と同時。競馬エッセイコンクールに入賞したことがきっかけで競馬ライターの道を進むことになった。

 競馬ライターとしてそれなりの収入があっても、すべて競馬につぎ込んでしまうため、サイフの中身はすっからかんなんてこともしょっちゅうだ。

「1年ほど前には全財産が1000円なんてこともあって。競馬場から帰りの電車賃がないということもありました。

 一応、京都に住まいはあるんですが、築40年以上で家賃は1万円。お風呂とトイレは共同で、エアコンなんてもちろんありません。でも年に数日しかいないので問題ないです」
2016年4月、JRAの藤田菜七子騎手の来場に、500人を超えるファンが正門前で行列を作り、開門を待った金沢競馬場(今野顕撮影)
2016年4月、JRAの藤田菜七子騎手の来場に、500人を超えるファンが正門前で行列を作り、開門を待った金沢競馬場(今野顕撮影)
 競馬を単なる賭け事とは考えない彼女は、競馬を生で観戦することにこだわる。

「馬券はネットでも買えるけれど、競馬場に行かないと味わえないものがあります。砂しぶきを上げて懸命に走る馬の迫力、勝利ジョッキーに対して沸き起こる大歓声など、現場でしか味わえない興奮があるんです」

 日本中央競馬会が運営する日本ダービーや有馬記念といった大きなレースは、観客数も多く盛り上がるが、各地の自治体や団体が運営する地方競馬には、また違った魅力がある。

「地方競馬の中には、経営難で廃止寸前といった窮地に立たされているところも数多くあります。中央競馬の1着賞金が数百万から数千万円以上なのに対して、地方競馬は10万円なんてところも。それでも騎手や馬にかかわる人たちは命をかけて闘っている。そこにロマンを感じるんです」

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