37年連続重賞制覇や27年連続年間100勝以上など、数々の記録保持者でもある。まさに現役にして伝説。競馬界のレジェンドだ。

 的場文男騎手は偉大である。これはどこからも文句の出ようがない事実である。何しろ史上最多勝となるのだから。

 だが、的場騎手の真の偉大さは、そこではないと思う。的場騎手は大ベテランである。まもなく62歳。

 この年でなお、トップアスリートとして活躍できる肉体を維持している事実。戦い続けるにも身体の維持にも欠かせないであろう、精神力にも目を見張る。だがそれも、的場騎手の偉大さの一部ではあるが、肝ではないと思う。

 現役生活は45年になろうとしている。長く競馬界のトップクラスに君臨してきた。それだけで、「この人は偉い」と思うのが当たり前であり、若い者は前に出るだけで緊張し、話をするのも恐れ多い、ということになっても不思議ではない。若い者、というが、この大ベテランより年上などという者は、今となっては競馬界にそういないのだ。現役騎手はもちろん、調教師も馬主も、ほとんどは的場騎手より年下である。

 では、的場文男騎手は年下ばかりの周囲から尊敬を受けるだけなのかというと、そうではない。

 的場騎手は、自分よりうんと年下の若い騎手たちと対等に冗談を飛ばし合い、時にはケンカをする。その姿はまるきり伝説の人という様子ではない。ただの、ちょっと気持ちの若いオジサンである。しかもどちらかというと、自分大好き系のやや困った人であったりもする。
兄弟子の赤間調教師が管理したハシルショウグン(手前)で1993年の帝王賞に優勝。的場騎手にとって会心の騎乗だった
兄弟子の赤間調教師が管理したハシルショウグン(手前)で1993年の帝王賞に優勝。的場騎手にとって会心の騎乗だった
 この気持ちの若い、少し困ったオジサンを扱うのに、周囲の若者たちは容赦がない。遠慮なくその言動を笑いのネタにするし、やれ「あの人は勝手だ」とか「ズルい」とか、言いたい放題だ。

 そして、このレジェンドは、そうしたことに全く無頓着である。おちょくられてもネタにされても、気にしない。かといって超然としているかというとそうではなく、度が過ぎれば怒る。怒るときもまるで同じ目線で怒るのであり、伝説のお方が若者を諭すという風情では、全然ない。