島田明宏(作家、ライター)

 日本の競馬界にまた一つ、とてつもない大記録が生まれようとしている。「大井の帝王」こと南関東所属騎手の的場文男(61)が地方競馬通算7150勝をマークし、佐々木竹見元騎手(76)が2001年に打ち立てた日本最多勝記録7151勝に王手をかけたのである。
 
 この数字がいかに大きなものであるかは、土日だけの開催とはいえ、1987年の騎手デビューからほとんどすべての最年少記録を打ち立ててきた武豊(49)でさえ、JRA通算3985勝(地方と海外を合わせると4163勝。8月2日現在、以下同)ということからもお分かりいただけるだろう。

 自身も「レジェンド」と呼ばれる武が「尊敬する先輩の一人」とリスペクトする「レジェンド中のレジェンド」的場文男とは、どんな騎手なのか。

 的場は1956年9月7日、福岡で生まれた。騎手を目指していた中学生のとき、佐賀競馬場の馬主だった父と下見のため上京し、大井に厩舎を構えていた小暮嘉久に見いだされ、弟子入りする。

 17歳になった1973年10月16日に騎手としてデビューし、11月6日に初勝利をマーク。デビュー5年目の1977年、アラブ王冠賞をヨシノライデンで勝ち、重賞初制覇。1983年、129勝を挙げ、初の大井競馬リーディングの座についた。

 27歳でリーディングになったのだから、決して遅咲きだったわけではないが、地道に勝ち鞍を重ね、トップジョッキーとしての地歩を固めていく。

 1987年に通算1000勝を達成し、以降1993年、1999年、2002年、2006年、2010年に1000勝ずつ積み重ね、2017年5月17日、川崎マイラーズをリアライズリンクスで制し、通算7000勝に到達。同時に、自身の持つ地方競馬最高齢重賞勝利記録を更新し、60歳8カ月10日とした。
2017年5月、川崎競馬場で通算7000勝を達成し、「川崎のレジェンド」佐々木竹見氏(左)と握手を交わす的場文男騎手(高橋朋彦撮影)
2017年5月、川崎競馬場で通算7000勝を達成し、「川崎のレジェンド」佐々木竹見氏(左)と握手を交わす的場文男騎手(高橋朋彦撮影)
 日本の競馬史上、通算7000勝以上を挙げたのは、的場と前述した佐々木竹見しかいない。

 歴代3位の石崎隆之(62、船橋)が6269勝、4位の川原正一(59、兵庫)が5335勝、5位の鮫島克也(55、佐賀)が4775勝。6位は2010年に引退した桑島孝春の4713勝、メイセイオペラでフェブラリーステークスを勝ち、地方馬による唯一のJRA・GI勝利を達成した菅原勲は2012年に通算4127勝で引退している。

 そう、的場はすでにとてつもない高みにいて、そこからさらに頂点を極めようとしているのだ。