こういった人たちから伝えられるニュースは、ずっしりと重みがあり、信頼感があり、また視聴者が考えさせられる深みを持っていました。私たちが優れた「ニュース情報バラエティー」をテレビで見て楽しむとき、そのニュースの背景について考え、そのニュースの真相について自分なりに考える、というように知的好奇心をフル回転することによって、世の中の出来事をより深く知る喜びを味わっているのです。

 視聴者の知的好奇心がいかに満たされるのか、そのレベルはニュースを伝えるメーンキャスターが、そのニュースについていかに深く知識を持っているのか、によって自ずと決まってきます。メーンキャスターの知識が軽く薄っぺらなものであれば、視聴者の論考も軽く薄っぺらなものにしかなりません。跳んだりはねたり、踊ったり歌ったりする訓練しか受けていないアイドルや、人を笑わせることが本業のタレントが、カンペを読んで伝えるニュースには、厚みも信頼感もなく、視聴者に論考を促すレベルには至りません。

 いまだに池上彰さんの解説する「ニュース情報バラエティー」が、飛び抜けて大きな信頼度と、高い視聴率を保っている理由は、彼自身の中に蓄積されたニュースに関する膨大な知識と、それを裏打ちする長年の取材経験があるからです。

 誰もが池上さんのレベルにならなければニュースキャスターを務められない、という訳ではありませんが、十分な取材経験と知識を持ったニュースのプロが他にもいるはずです。そういった人がメーンキャスターを務める、大人の「ニュース情報バラエティー」をもっと見てみたいと、私は常々思っています。アイドルや芸能人は聞き手であったり、質問者であったり、といったニュースの素人の代表として出演してくれればいいのです。

 大好きなアイドルがメーンキャスターを務めているから、という単純な理由だけでニュース番組を見ていると、日本人はどんどん思考力を失っていくことでしょう。そうして世の中の真相を深く知ることもせず、様々な事象について表面的で浅薄な知識しか持たず、自分自身の頭を使って自分の意見を語ることもできない愚衆が増えることになり、為政者にとっては御しやすい国になるかもしれません。
「ここがポイント‼池上彰解説塾」(テレビ朝日系)の収録後会見した池上彰氏=2014年4月
「ここがポイント‼池上彰解説塾」(テレビ朝日系)の収録後会見した池上彰氏=2014年4月
 しかし、国民がニュースを見て自分なりに論考を深め、自分なりの意見を持つ訓練を普段からしておかなければ、真の民主主義を実現することはできません。テレビというメディアが何のためにあるのか、エンターテイメント以外の重要な使命とは何なのか。それは報道機関として、世の中で起きている事実を的確に伝え、批判すべき所は批判できるように、主権者たる国民に深い論考を促し、鋭い判断の材料を届けることです。

 アメリカではCBS、NBC、ABCの三大ネットワークで、夕方に放送する全国ニュースに限っては、アンカー(ニュースキャスター)1人で進行します。彼らは国民から高い信頼を寄せられており、「大統領が勝手なことを言えない者がこの国に3人だけいる。三大ネットのアンカーだ」という格言まであります。

 日本でもそれくらい信頼感のある、骨太な本物のジャーナリストに活躍してもらいたいものです。少なくとも、踊ったり歌ったりするアイドルではなく、本職としてニュースの経験を積んできたニュースのプロが、ニュースキャスターの役割を務める、まっとうな報道番組のあり方を、今こそ取り戻すべき時ではないでしょうか。