しかも、多くの競技団体は語学に弱い。だが、スポーツである以上、国際競技連盟(IF)との折衝や、他国の国内競技団体(NF)との交流は必要だ。ボクシング連盟に関して言えば、誰も手を出したくないところに、自ら名乗り出て挑戦したのが山根氏だった。

 山根氏は1994年から2002年まで国際ボクシング連盟(AIBA)の常務理事を務めている。山根氏は、当時の理事だった台湾出身の国際オリンピック委員会(IOC)委員、呉経国氏とも関係が深かった。呉氏は親日家として知られ、その後06年にAIBA会長に就任したが、山根氏が早くから「ボクシング界の大物」と親交を深めていた点で、その嗅覚の鋭さを感じ取ることができよう。

 「再興する会」の告発の中にあった公認グローブの独占販売疑惑に関しても、グローブがAIBA公認のものだったことから、IFからの情報はすべて山根氏を通さなければ入ってこなかったことがうかがえる。そういう意味では、誰もやりたがらない仕事を重ねるうちに人脈をつくり、それを自らの実績にしたことは事実であろう。

 言い換えれば、連盟は所詮「手弁当」の集まりである。山根氏のように団体トップ自らが多少なりとも組織に利益をもたらす仕事をしてくれれば、これほどありがたいことはない。だからこそ、大きな問題が起きない限り、現状に逆らう人間がめったに出ないのである。

 弱小競技団体は本質的にこのような弱点を抱えている。もっと言えば、同じような問題が再び起きても不思議ではない。

2012年4月、会見後にファイティングポーズを
とる日本ボクシング連盟の山根明会長(白鳥恵撮影)
 先般の女子レスリング監督によるパワハラも同根だと言える。日本レスリング協会の栄和人前強化本部長が、福田富昭会長から選手育成を任されたとき、誰も率先してやりたいと思う人はいなかった。

 当時の女子レスリングはまだ黎明(れいめい)期であり、これから巨木となるか、枯れ木となるかも分からない。そんな種目の育成に尽力した栄氏は、文字通り功労者である。だが、その手法は、少ない競技人口の中から効率的に選手を育成するという独自のやり方だった。やがて、その手法に満足できない選手やコーチが出てくるのは必然であり、栄氏の「絶対体制」にノーを突き付けたのが、この問題の発端だった。

 「手弁当」の団体トップは、実は大変な重労働である。ある意味、言いたい放題の役員や全国の関係者を一つにまとめなければならない。そのような任務を果たせる人など、なかなかいないのも事実だ。だが、いったんトップの座を手に入れると、その状況に安住してしまう。