藤井靖(明星大心理学部准教授、臨床心理士)

 日本ボクシング連盟の山根明会長が辞任を表明した。今回の騒動、いわばボクシング連盟の内紛ともいうべき有志の告発は、その内容のみならず、告発の対象となった山根氏の強烈なキャラクターと、連盟組織の内実に大きな注目が集まった。

 告発以来、山根氏は連日のマスコミ対応の中で、数々の自説を展開してきた。その中で、彼のパーソナリティーや考え方、価値観が白日の下にさらされた。

 また、会長として連盟の中でどのような形で力を発揮してきたか、どのように組織をマネジメントしてきたかが透けて見えるようになった。その内実は、社会通念からして多くの国民が首をかしげざるを得ないものであることは既報の通りである。

 では、なぜ山根氏は連盟の中で絶対的な地位を築き、維持することができたのだろうか。

 そもそも、組織のトップとして強権的な指示を発動し、一極集中のいわば「山根王国」を作り上げて来た経緯は、パワハラがまかり通る構造そのものである。また、本人が認めているように反社会勢力とのつながりを背景に、「会長は何をするか分からない」という恐怖や不安によってコントロールされてきたとみられる組織のあり方は、今回の騒動の本質的な問題でもある。

 とはいえ、連盟の立場からすると、山根氏は世界の組織や五輪などを通じて相当の利益をもたらしてきた存在であることは想像に難くない。それゆえに、幹部であっても物言えぬ異常な組織体制が維持されてきたのであろう。
2018年8月8日、日本ボクシング連盟の山根明会長の記者会見場に置かれた大量のマスコミのマイク(甘利慈撮影)
2018年8月8日、日本ボクシング連盟の山根明会長の記者会見場に置かれた大量のマスコミのマイク(甘利慈撮影)
 おそらく、理事の多くは、このような組織風土を背景にした「そうならざるを得ない」イエスマンである。しかし一方で、会長の考えや価値観に共感を示し、いわば信奉者として支えた役職者もいて、そのことも強い権力を維持してきた要因になっていると思われる。

 もう少し山根氏個人にフォーカスして考えると、会見での記者らとのやりとりから、彼の地位を維持することに寄与したと考えられる独特の「コミュニケーション術」が見えてくる。