水野基樹(順天堂大スポーツ健康科学部 先任准教授)

 「アマチュアは和で勝って、プロは勝って和ができる(アマは和して勝つ、プロは勝って和す)」

 これは、プロ野球の元西鉄ライオンズの名将である三原脩の含蓄ある言葉である。本来、組織における「和」を尊び、組織メンバー全員で一致団結して、目標や夢の実現に向かうはずのアマチュアのスポーツ組織であるが、ここ最近になって不祥事やトラブルが後を絶たない。それは一体なぜなのであろうか。

 スポーツ組織とは、同好会サークルからプロ野球やJリーグのようなプロスポーツクラブ、または各競技団体のようなスポーツ統括団体まで幅広く存在する。よって、スポーツ組織の形態により、起こりうる不祥事の内容は多種多様であるが、その根っこには、共通の問題点が見え隠れしているような気がしてならない。すなわち、ガバナンス(統治)とダイバーシティー(多様性)の欠如である。

 そもそも組織とは、「2人以上の人々によって意識的に調整された活動および諸力の体系(システム)」と定義される(C.I.Barnard著、山本安次郎訳『新訳 経営者の役割』ダイヤモンド社)。個人では成しえない課題や目標を達成するために人々が協働するための集合体である。

 スポーツの文脈で考えてみても、あるスポーツ種目を実施したいということになれば、いずれかのスポーツ組織(多くの場合はスポーツチーム)に所属して活動をすることになる。そこでは、組織として機能するように企業組織や非営利組織(NPO)などで実践されているマネジメント活動が求められる。

 しかしながら、多くのスポーツ組織においては、体系的なマネジメント活動の欠如または脆弱(ぜいじゃく)性が指摘されているという現実がある。換言すると、ガバナンスの欠如であり、これがスポーツ組織に特有の問題でもある。もちろん、企業組織においてもガバナンス体制の問題が議論されることはあるが、スポーツ組織においては、ほぼ素人の集団が組織を運営しているケースも見受けられるなど深刻な問題となっている。

 スポーツ組織には多種多様なステークホルダー(利害関係者)が存在している。例えば、プロ野球の球団では、選手や監督・コーチはもちろん、チームのファン、スポンサー企業、取引企業、地方自治体、地域住民などは、すべてステークホルダーといえる。元来、スポーツ組織とは、公共性が高く、特定の権力に屈したり、ごく少数の権力者によって恣意(しい)的に操られてはならない。また、特定の企業や団体に偏った利益を提供するものでもない。当該のスポーツ組織のステークホルダーの利害関係を調整しながら、マネジメント活動を実践しなければならないのである。
1958年10月、日本シリーズでの対戦相手、巨人の水原茂監督(左)と握手する西鉄の三原脩監督
1958年10月、日本シリーズでの対戦相手、巨人の水原茂監督(左)と握手する西鉄の三原脩監督
 スポーツの公共性や公益性を鑑みると、スポーツ組織におけるガバナンスの在り方は、企業組織におけるコーポレート・ガバナンス(企業統治)と同様に極めて重要だと考えられる。スポーツが社会に及ぼす影響の大きさが増すにつれて、その競技種目の統括団体やチームは、多くのメディア媒体によって取り上げられることになる。したがって、チーム運営や組織マネジメントにおいては、より質の高いガバナンスが求められることになるが、スポーツ界を挙げたガバナンスの質の向上に対する取り組みを始めるまでには至ってはいないというのが現状である。