尾辻かな子(衆議院議員)

 月刊誌『新潮45』8月号に自民党の杉田水脈衆院議員が「LGBT支援の度が過ぎる」を寄稿した。この論文(以下「杉田論文」)には以下のような記述があった。

 「(リベラルメディアの報道の背後にあるのは)LGBTへの差別をなくし、その生きづらさを解消してあげよう、そして多様な生き方を認めてあげようという考え方」

 「しかし、LBGTだからといって、実際そんなに差別されているものでしょうか」

 「そもそも日本には、同性愛の人たちに対して、『非国民だ!』という風潮はありません」

 「日本の社会では(略)迫害の歴史はありませんでした。むしろ、寛容な社会だった」

 「(LGBTの生きづらさは)制度を変えることで、どうにかなるものではありません」

 「行政が動くということは税金を使うということ(略)彼ら彼女ら(注=LGBTカップル)は子供を作らない、つまり『生産性』がないのです。そこに税金を投入することが果たしていいのか」

 「様々な性的指向も認めよということになると(略)兄弟婚を認めろ、親子婚を認めろ、それどころかペット婚や、機械と結婚させろという声も出てくるかも」

 「『LGBT』を取り上げる報道は、こうした傾向を助長させることにもなりかねません(略)」

 「『普通であること』を見失っていく社会は『秩序』がなくなり、いずれ崩壊していくことにもなりかねません」

 これは危険な暴論だと、私が自らのツイッターで批判したところ、1万2000以上リツイートされ、毎日新聞がそれをネット上で炎上と報道した。その後、当事者団体の抗議声明も報道され、自民党本部前に5千人(主催者発表)が集まる抗議行動へと広がっていった。

 私自身、2005年、大阪府議会議員の時にレズビアンだとカミングアウトし、政治の現場で性的マイノリティーの可視化と政策による解決を目指して活動をしてきた。国会では唯一のオープンな当事者議員である。

 杉田論文に対する疑問はいろいろあるが、絞って議論したいと思う。議論の土台は、LGBTが置かれている現状を知ることだ。「LGBT支援の度が過ぎる」という「支援」は、何を指し、どのくらいの税金が投入されているのか。

 そもそもLGBT支援に使っている税金などほとんどない。各省庁に問い合わせをしたが、唯一具体的な金額が提示されたのは、人権擁護局を抱える法務省のみ。その予算が局として34億700万円。法務省予算は、本年度、約7638億。その額、0・44%だ。

 さらに、これは人権擁護局全体の予算であり、本年度の人権啓発活動強調事項は、女性、子供、拉致問題、性的指向、性自認、ホームレスなど17項目にわたっている。LGBTに特化した予算は、国家予算の中に見受けられない。
月刊誌「新潮45」に掲載された自民党の杉田水脈衆院議員の寄稿
月刊誌「新潮45」に掲載された自民党の杉田水脈衆院議員の寄稿
 では、最近のパートナーシップ証明書、宣誓書受領証などを発行している自治体ではどうだろうか。札幌市では200万円、世田谷区でも200万円、渋谷区は男女共同参画と合わせて1300万円。この1300万円も、渋谷区の総予算938億の0・01%である。各自治体もLGBTだけという区分で予算計上をしていないので、計算がしにくいという共通意見も聞いた。

 LGBT支援は、LGBTが存在するという前提をもとに行政サービスの範囲を広げる形が多い。同性パートナーシップの宣誓書受領証発行も業務の拡大であって、億を超える予算が必要な箱ものを作るといった事業ではない。