しかし、これまで日本軍による強制連行が散々流布されてきた事実や、日本兵に対して性行為を提供させられた、という文脈から判断して、読者は当然「日本軍が組織的に強制連行して性奴隷にした」と思い込んでしまう。実に姑息な印象操作の手法だとギルバート氏は憤る。

 ここで肝心なことは、私のような英語を日常使用する日本人だけではなく、米国人で弁護士でもあるギルバート氏がそう断言した、という事実だ。もちろん、他にも多くのネイティブスピーカーが賛同している。この点は議論の余地がないと言っていい。

 われわれは次の4点を申し入れた。

1.今後、前記の表現(forced to provide sex)を使用しないこと
.吉田証言が虚偽であり、記事を撤回した事実を改めて英文で告知すること
3.もし、前記表現が軍隊による物理的強制連行や性奴隷化を意味しないと主張するなら、具体的に、「性行為を強制された(forced to provide sex)」とは何を意味するのか明確に説明すること。
4.今後慰安婦の説明的表現を追加するなら、comfort women who worked in brothels regulated by the military authoritiesなどの表現を使用すること。


 われわれは、朝日が「forced to provide sex」という表現が、軍隊による物理的な強制を意味しないと強弁することを想定して、3番目の質問も加えた。われわれの主張を否定するならば、実際に何を意味しているのか明確に説明すべきである。後田広報部長の「重く受け止めて真摯(しんし)に回答する」という言葉を受けて、われわれは朝日新聞本社を後にした。

 回答期限の7月23日。夕方になって後田広報部長名で朝日からの回答が届いた。その中身については朝日がウェブで公開した回答全文を見ていただくとして、私は上記3番目の質問への回答を見て唖然とした。

「forced to provide sex」という表現について、英語ネイティブスピーカーが読めば、「軍隊による物理的な強制で性行為を強いられた」という印象を受けると指摘されていますが、当該表現は「意に反して性行為をさせられた」という意味です。


 受動態で行為者を曖昧にするのは、公正ではないという指摘に対し、「意に反して性行為をさせられた」と受動態で答えている。これでは全く答えになっていない。
1983年10月、韓国で謝罪の碑を建立する吉田清治氏を報じた朝日新聞夕刊
「forced to provide sex」という表現を用いた2018年1月10日付の朝日新聞デジタル英語版の記事
 「forced」と書いているのだから、意に反しているのは当たり前である。強制性を前提としながら、行為者を明示しないという無責任な行為を止めようとしない強い意志を感じる。

 恐らく朝日は理由が何であれ、本人の意に反していたらそれはすなわち「強制」であり「性奴隷」である、と言いたいのだろう。いわゆる「広義の強制」というスタンスである。